思わず好きになる!? みんなが知らない数学の「別の顔」

人生の決断、ビジネスの判断に役立つ!
志村 史夫 プロフィール

では「工学」とは?

科学と技術は互いに本質的に異なるものであるが、近年、それらが互いに強い相乗効果を持ち、部分的には融合し、それぞれがそれぞれの発展に大きく寄与している(拙著『人間と科学・技術』牧野出版、2009)

科学と技術に似た言葉に“工学”がある。“工学”は“engineering”の訳語で、国語辞典には「基礎科学を工業生産に応用して生産力を向上させるための応用的科学技術の総称。古くは専ら兵器の製作および取扱いの方法を指す意味に用いたが、のち土木工学を、さらに現在では物質・エネルギー・情報などにかかわる広い範囲を含む」(『広辞苑 第七版』岩波書店、2008)と書かれている。

“engineering”には、「問題を巧みに処理すること」という意味も含まれている。つまり、工学が科学と技術を使って、問題を巧みに処理するのである。

問題を巧みに処理するためには、段取りや設計が重要であり、そのとき、数学が具体的な形で大いに貢献するわけである。

巧みに問題を処理するためには段取りや設計が重要 Photo by iStock

中谷宇吉郎は前掲の『科学の方法』の中で、次のように述べている。

〈ところで数学は、一番はじめにいったように、人間の頭の中で作られたものである。それでいくら高度の数学を使っても、人間が全然知らなかったことは、数学からは出てこない。しかし人間が作ったとはいっても、これは個人が作ったものではない。いわば人類の頭脳が作ったものである。それで基本的な自然現象の知識を(中略)整理したり、発展させたりすることができる。従って個人の頭脳ではとうてい到達し得られないところまで、人間の思考を導いていってくれる。そこにほんとうの意味での数学の大切さがある。

現在の科学では、
数学を離れては、第一に物理学も化学も成り立たない。数学などはあまり用いていないように見える他の科学の部門においても、物理学や化学は使っているので、間接には深いつながりを持っているわけである。数学というものは、以上述べたように、個人の思考の及ばないところに使っていくときに、非常な力を発揮するものなのである。下手をすると、数学が論文の飾りに使われる場合もあるが、そういう場合には、数学があまり意味をなしていないことは、いうまでもない〉

中谷のこの言葉に、科学、技術、工学と数学との関係が余すところなく述べられていると思う。

私はこの引用文中の「数学が論文の飾りに……」を読んだとき、思わず苦笑してしまった。私自身、そのような論文をいくつも読んだ憶えがあるからである。

みなさんには、中谷宇吉郎がいうところの「ほんとうの意味での数学の大切さ」を理解し、「数学の面白さ」を味わっていただきたいと思う。

数学は決して“飾り”ではないし、“つまらない科目”でもない。繰り返し述べているように、数学、そして数学的な考え方は日常生活の中でも大いに役立つし、私たちの脳を大いに活性化してくれるモノでもあるのだ。

「座標」の発見に貢献した生きものとは?

たとえば、どんな仕事や勉強にも、それぞれに重要度と緊急度があるだろう。「重要かつ緊急」なものには迅速に取り組む必要があるし、「重要でも緊急でもない」ことなら後回しにして差し支えない。

では、「重要ではあるが緊急ではない」ものはどうするか?

そのような場合に、数学が得意とする論理的な検討と、それを一目瞭然に図示してくれるグラフや座標が役に立つ。数学は日常生活において、「思考を整理し、筋道立てて考える」道具として、大いに役立ってくれるのだ。

私は今回、多くの数学(数式)アレルギーの人たちに、数学(数式)のそのような側面に気づいていただきたいと思い、『いやでも数学が面白くなる』を上梓した。

同書の大きな特色の一つは、数学の応用範囲の拡大が、どのように成されてきたかを興味深いエピソードを交えて紹介することにある。

たとえば、グラフを作成するのに不可欠な「座標」の発想のヒントになったのが、ある身近な生きものだったことをご存じだろうか。科学史に燦然とその名を遺す天才・デカルトがあるとき、その生きものならではの行動を見ていて、座標の着想を得たのだが、はたしてその生きものの正体は……?

また、数学史に革命を起こした「ゼロの発見」はまさしく偉大な発明だが、その発明者はインド人であるという定説を覆す史実も本文中で紹介している。

「数式!? 見るだけで嫌!」──そういう人こそ、ぜひお読みいただければ幸いである。

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