元経済ヤクザが解説「ゴーン氏が打った4つの致命的悪手」

そして最悪の結末も見えてきた…
猫組長(菅原潮) プロフィール

アメリカは身ぐるみはがすかもしれない

ゴーン氏の「挑発」に刺激されたのか、検察はさらなるカードを持とうと、アメリカに「捜査共助」を依頼した。国家を超える金の流れをつかむにはアメリカの協力が不可欠なのは言うまでもないが、私はアメリカを動かしてしまったことこそが、ゴーン氏らが悪手を連発したことが招いた「最悪の結末」だと私は考えている。

すでに何度も書いたが、国際間の送金はSWIFTシステム上で行われる。そしてテロ対策の名目で、人権を無視してSWIFT上にある金融の移転情報を開示させることができるのは、アメリカという国をおいてほかにない。

実際に、読売新聞4月5日朝刊の『流用容疑 米と捜査共助』は<米当局の協力でゴーン被告の息子がCEOを務める別の投資関連会社側の資料を調べたところ、GFIから流れた資金がゴーン被告の個人的な投資に充てられた疑いが浮上した>と伝えている。

 

また、妻キャロル氏の会社に流れた金が大型クルーザー「シャチョウ号」の購入資金に充てられたことなどの「検察側の新証拠」はゴーン氏のパソコンから押収されたと報じられている。

しかし、こうした記録が真実かどうかの裏取りするためには、実際の金の動きの解明が必要であることは言うまでもない。

ましてやゴーン氏は、一連の資金移転をアメリカの通貨「ドル」で行っている。ゴーン事件の捜査にアメリカが「参戦」したということは、これから先、ゴーン氏の金の流れがすべて丸裸にされる、ということを意味しているのだ。金の流れの解明が最も重要となる経済事件において、アメリカの参戦が決まった時点で、残念ながらゴーン氏は詰んだも同然、なのだ

そしてアメリカが捜査に参戦した以上、すでにゴーン氏の資金はすべて監視対象になっていると見るべきだ。たとえば、ゴーン氏の依頼を受けた第三者の手で資金をどこかに移動しても、新たな罪が生まれることになるだろう。犯罪資金の無慈悲な収奪がアメリカのお家芸であることは、石油で稼いだ600億円を銀行ごと没収された私が一番良く知っている。

日産はニューヨーク市場でADR(米国預託証券=米国で国外企業の株取引ができるように発行された証券)として取引されており、ゴーン氏の逮捕を受けて8%も株価が下落した。その原因であるゴーン氏の資産を没収する、「自国の健全な投資市場を混乱させた」という大義名分はすでに生まれているのだ。この後も悪手を打ち続れば、最悪の結末が待っているということを、ゴーン氏の関係者は肝に銘じた方がいい。

【PHOTO】gettyimages

「株主に対する説明責任」の癖が抜けなかったのか、すべてにおいて悪手を連発してしまったゴーン氏。勝てるゲームではなかったかもしれないが、あえて一つの負けを選ぶというゲームの進め方をすれば、「アメリカの参戦」という最悪の結末だけは免れた可能性は大きい。罪状を認めることは、否認よりよほどマシな手段だ、ということだ。

有能な経営者であれば、二手三手先を読むことなど当たり前にできたはずだ。ゴーン氏が今回の一件において悪手を連発してしまったのは、突然の危機の到来に冷静さを保つのが困難であることの証左か、それとも、本来的に彼が「有能な人物」ではなかったということなのか。

いずれにせよ、私に一言相談があれば、このゲームを乗り切るための「黒いテクニック」を指南したのだが……。

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