元経済ヤクザが解説「ゴーン氏が打った4つの致命的悪手」

そして最悪の結末も見えてきた…
猫組長(菅原潮) プロフィール

「完黙」こそが最強の武器だった

ゴーン氏の悪手はこれだけではない。私は、今回の事件においてゴーン氏が容疑を「全面的に否認」したことが、決定的な落ち度であったと、考えている。

結論から言えば、否認ではなく「完全黙秘」を貫けばよかったのだ。後述するが、両者は似て非なるものである。

取り調べとは、有罪を成立させたい捜査側と、無罪を勝ち取りたい容疑者側が証言を取り合うゲームだ。容疑者が沈黙した時、捜査側は裁判で沈黙に勝てるだけの決定的な物証を探すことになる。

「否認」とは、その物証を前に、自らの言葉で突きつけられた事実を否定的に説明する行為だ。容疑者が否認すれば、検察側はそれを打ち消す新たな目標と証拠を探すことになる。

その良し悪しは別として、否認をすればするほど、検察側の力の込め具合が増すことになるのが現実だ。哀しいかな、裁判というのはそういう「ゲーム」なのである。特に、国境を超えた経済事件のように複雑に入り組んでいる場合、事件の当事者の反応がなければ、検察は自分たちの捜査が正しいのかどうかさえ分からなくなる。このような場合、被疑者の最強の武器は「完黙(完全黙秘)」なのだ。

 

否認と完黙は似て非なるもの。繰り返すが、否認であっても、相手の反応があれば検察は攻める方法を検討することができる。新たな証拠探しにも力を入れることになる。

しかし、完黙の場合、検察は集めた証拠が正しいのか、あるいは自分たちの筋書きや見立てが正しいのか間違っているのかさえ分からなくなる。無罪になることはないかもしれないが、少なくとも、今後の「ゲーム」を有利に進めることができるのだ。

ところがゴーン氏は容疑を否認し続けたうえ、保釈中の4月3日にTwitterアカウントを開設、「真実をお話しする準備をしています。4月11日木曜日に記者会見をします」とツイートした。黙っておけばいいものを、自らの言葉で説明しようとした。これは、このゲームのなかで最もやってはいけない悪手だ。話せば話すほど、検察側はその論拠を突き崩すための証拠を探すことになるのだから、保釈中に自分のことを話すつもりだったのは、愚の骨頂、と言えるだろう。

(4度目の逮捕に際して、弁護士はゴーン氏に黙秘を勧めたという。やはり黙秘こそが最大の武器なのだが、時すでに遅しだ。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190409-00000054-mai-soci

【PHOTO】iStock

一連のゴーン氏の対応は、本来「1」で済むべきものを、「4」「5」あるいは「6」に増やしていく悪手の連発だった、と私は考えている。4月4日の逮捕において、普段トヨタ車で護送することの多い特捜部があえて日産車を使うという「粋なはからい」をしたが、それこそが検察を悪い方向で刺激した証左だ(どうせやるなら、保釈時と同じように作業着で変装をさせてあげればいいのに……と私は苦笑したが)。