元経済ヤクザが解説「ゴーン氏が打った4つの致命的悪手」

そして最悪の結末も見えてきた…
猫組長(菅原潮) プロフィール

検察が狙いを定めるもの

為替の動きを読む能力が絶望的に足りなかったゴーン氏の「投資の焦げ付き」はこれだけではないと、私は考えている。その根拠は、この時の「ジュファリ氏からの差し入れ」と、「バハワン氏への借金」がほぼ同じ時期に起こっていることだ。

多重債務者は、借金によって借金を支払うのが常だ。返すカネがなければ、どこかからまた借りて来るしかない。そうした場合、最初に返済すべきなのは、暴力団やヤミ金など「怖くてうるさい借入先」からだ。バブル崩壊後、多額の借金を抱えた私も、実際に「怖くてうるさい借入先」への返済を優先した。

ゴーン氏の損失に対して「新生銀行」は新たな担保を求め、損失に対して「ロスカット」(強制決算)をしなかったのだから、「怖くてうるさい」借入先ではないことは明らかだ。ゴーン氏の巨額借り入れの時期が重なっていることと合わせれば、「投資の焦げ付き」は他にあったと考えなければ説明がつかないのではないか。

1月には、ゴーン氏がオランダにある「日産・三菱BV」を通じて、他の取締役が知らない700万ユーロ(約9億円)の支払いを受けたと、フランス経済誌が報じている。特捜部は「オマーン・ルート」の流れとは無関係な国、スイスに捜査幇助を依頼したが、「ダッチ・コネクション」を疑っている可能性は十分にある。そうなれば新たな「債務」が出てくる可能性もあるだろう。

4月5日には、「オマーン・ルート」でも名前の上がったゴーン氏の妻・キャロル氏が特捜部の聴取要求に応じずフランスに出国したものの、3日後には「戻る」ことを本人がラジオで明かした。公判での心証を稼ぐのであれば、そもそも出国はしないはずだ。ゴーン家にとって、すでにヨーロッパも居心地のよい場所でなくなったのではないか、と私は考えている。

 

悪手連発

また、経営者としての資質という意味では、特捜部の捜査に対するゴーン氏のリスクマネジメントにも問題があると、私は考えている。その第一のミスは「最初の弁護士の選択」だ。私がゴーン氏の立場なら、逮捕された直後に「国選弁護人」を指定していた。なぜか。

改めて説明することでもないだろうが、刑事事件の被疑者・被告人は、原則として逮捕後、「私選弁護人」か「国選弁護人」を選ぶことになる。国選弁護人に頼る場合は、弁護士に払うお金がない被告のケース……と一般的には思われている。だが法定刑が3年以上の懲役や公判前整理手続きが必要な事件では、(一定の条件を満たせば)国選にすることも可能だ。

たしかに国選弁護人の場合、だれが担当するかは裁判所が選任するので、当たり外れがある。頼りない弁護士にあたるのは不安だからということで、私選弁護人を選ぶのが普通だ。

だが、今回のような国際的に注目を集める事件の場合、裁判所は公平な公判維持のため、それこそ国の威信をかけて人選を行うはずだ。巨大企業・日産を舞台にした国際金融犯罪ということであれば、名を売るために「私がゴーン氏の弁護人になります」と立候補してくる弁護士も多く集まるだろう。

うまくいけば、海外の弁護士資格も持っていて、国際的な経済犯罪の弁護経験があり、英語が話せる弁護士が選べたかもしれない。結果論だが、自分で選ぶよりも、よっぽどこの事件にふさわしい弁護士に巡り合えたのではないか。

今回、ゴーン氏らがどのような経緯で弁護士を選んだのかは明らかでないが、日本国内での実績を選考の基準にしたのだな、という印象だ。この事件は国境を越えた経済事件である。「後の祭り」ではあるが、現在のゴーン氏が置かれている状況を考えると、国選にしておけばよかったのでは……と思ってしまうのだ。