2019.04.23
# 気象 # 環境

大気汚染物質を減らすと地球温暖化が進むという「不都合な真実」

「黒いすす」が温暖化を抑制する!?
サイエンスポータル プロフィール

九州大学応用力学研究所の竹村俊彦(たけむら・としひこ)教授らの研究グループは、世界のどこで、どれくらいの量の大気汚染物質が発生しているかを推定したデータをもとに、将来の地球温暖化の進み具合をコンピューターで予測した。

その際、黒いすすや硫酸塩の量を増減させてみて、その気候への影響を調べた。

「黒いすす」の削減は、温暖化抑制の役に立たない

その結果で象徴的なのが「黒いすす」の影響だ。太陽光を吸収する黒いすすを減らしても、温暖化抑制の効果は思ったほど表れないようなのだ。

大型トラックなどが加速するとき、もくもくと黒い排ガスを出すことがある。この色の正体が「黒いすす」で、ブラックカーボンともよばれる。

大気中に浮遊している黒いすすは太陽光を吸収するので、大気を暖め、地球温暖化を進める原因物質だと考えられてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書などでも、そう指摘されている。

国立環境研究所と海洋研究開発機構の研究グループもこの「黒いすす」に注目し、地球温暖化がとくに進む北極圏に到達するすすの出所を探る研究を行っている。

図1 「黒いすす(ブラックカーボン)」は、私たち人間の活動や森林火災など、さまざまな原因で大気に放出されている。ここでは、地球温暖化がとくに進む北極圏に運ばれるすすに注目している(国立環境研究所などのプレスリリースより)

こうした事情から、「黒いすすの削減は温暖化防止に効果的だ」と多くの人が考えている。

だが、黒いすすは、雲の発生にも影響を与える。そうした複雑な気象のしくみを考慮に入れて竹村さんらがシミュレーションを行ったところ、思ったほど効果的ではなかったのだ。

黒いすすがたくさんあると、低高度と高高度の気温のバランスが変わって、雨は降りにくくなる。水蒸気は雨になるとき熱を出すので、雨が少なくなれば、放出する熱が減って大気は暖まりにくくなる。

つまり、黒いすすには間接的に大気を冷やす働きもある。だから、黒いすすを減らすと、そのぶんだけ大気の温度が上がってしまう。

図2 地球を覆う「黒いすす」の分布をコンピューターシミュレーションで推定した結果。たとえば「5」という数字は、地上から上空まで足し合わせると、1平方メートルあたり5ミリグラムのすすが浮いているという意味。中国やインド、アフリカ中央部で、とくに多い(竹村俊彦・九州大学応用力学研究所教授提供)

黒いすすの減少が地球温暖化を進める要因は、これ以外にもいくつかある。

黒いすすには、たしかに太陽光を吸収して大気を暖める働きがあるのだが、一方で、まわりまわって大気を冷やすことになる間接的な効果ももっている。

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