テキサス州エル・パソで演説するベト・オルーク候補(筆者撮影)

トランプを脅かす次期大統領候補「オバマ二世」の実力

2020年大統領選の「最重要候補者」

米民主党のホープ、べト・オルーク元下院議員が3月30日、地元である国境の街、テキサス州エルパソで大統領選挙出馬宣言を行いました。オルーク候補はアイルランド系米国人ですが、そのスマートなスタイルや風貌から「オバマ二世」とも呼ばれています。

今回筆者は現地に入り、オルーク候補の集会に参加しました。本稿では、彼と同陣営がどのような選挙戦略のもとに2020年大統領選を戦うかについて予測・解説します。

 

「国境の息子」

集会場となったエルパソ・ストリートとオーバーランド・アベニューの角に、集会が始まる6時間前の午前4時すぎに到着すると、すでに関係者が慌ただしく設営の準備をしていました。その日のエルパソの日の出は午前6時57分で、辺りはまだ暗かったのですが、急ピッチで演台の周りにパイプバリケードを設置しているのが分かりました。

なぜオルーク陣営は、このエルパソ・ストリートとオーバーランド・アベニューの角を、選挙戦の「出発点」である出馬宣言の場所に選択したのでしょうか。

実は、この場所からアメリカとメキシコの国境まではわずか数百メートル、数ブロックしか離れていません。実際に、オルーク候補は演説で「ここから3、4ブロックのところに国境がある」と述べてメキシコの方角を指し、そのうえでトランプ大統領の「国境の壁」建設に鋭く反対しました。

この日の演説は約36分間でしたが、主な論題はやはり移民政策に関するものでした。オルーク陣営には、聴衆にも「国境」を強く意識させるような演出を行うことで、トランプ大統領との違いを鮮明にする狙いがあったものと思われます。

集会場に集まった約6000人の支持者を前に、オルーク候補を応援するベロニカ・エスコバル下院議員(民主党・テキサス州第16選挙区選出)は、彼を「国境の息子(son of the border)」と呼んで紹介しました。4月4日現在、17人もの大統領候補が乱立している民主党において、オルーク候補は唯一国境の街で生まれ育った人物だからです。

ジェスチャーをまじえて演説するオルーク候補(筆者撮影)

トランプ大統領が「国境の壁」建設を「公約の中の公約」と位置付けているのに対して、オルーク候補はエルパソと隣接するメキシコの街ファレスとの国境に造られた壁を「すべて崩す」と主張しています。「造るvs. 壊す」というトランプ大統領との対立構図を鮮明にしているわけです。

オルーク候補は演説で、「エルパソのコミュニティは100年以上も前から、よりよい生活を求めて暴力や貧困から逃れてきた移民を歓迎してきた」「エルパソは移民と難民申請者の街だ」と強調し、彼らに「犯罪者」「殺人者」「ギャング」「詐欺師」などのレッテルを貼るトランプ大統領を痛烈に批判しました。

さらに、「いまも(エルパソとメキシコとの国境に架かる)国際橋の下には、金網や有刺鉄線に囲まれ閉じ込められている難民申請者がいる。彼らは尊厳をもって扱われるべきだ」と語気を強めました。彼の言葉は、実際にその現場から数百メートルの場所から繰り出されたことで、より真に迫るものになったといえるでしょう。

オルーク候補は、「収入や人種、あるいは米国で過ごした時間の多寡に関わらず、すべての人々が成功するべきなのです」と声高に訴え、融和と寛容のメッセージを発信しました。この点も、分断と恐怖を煽ることによって支持を得るトランプ大統領の手法とは、きわめて対照的です。