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戦わずして勝つ! 孫子に学ぶ投資の極意

無駄なエネルギーを使うな
大原 浩 プロフィール

多数の決断がうまくいくはずが無い

バフェットが鋭く指摘するのは「熟慮して行ったたった1つの決断が失敗するのなら、それよりも集中力が劣った多数の決断がうまくいくはずが無い」ということである。

まさに孫子の「一撃必殺」と同じことなのである。

バフェットのモットーに、

1. 絶対損をしないこと
2. 1を絶対に忘れないこと

というものがある。若い頃から「ケチ」で有名であったバフェットは、少しでも自分の資産が減ることに耐えられない。だから孫子の教えのとおり、無駄な局地戦で自分の資産を疲弊(失う)ことは絶対にしたくない。だから「絶対に勝てる(儲かる)」と確信できるときにしか投資を行わないのだ。

それでも70年も投資をやっていると、「USエアー」や「IBM」など「弘法も筆の誤り」ならぬ「バフェットも投資の誤り」のようなケースは少なくない。

ただ、バフェットがすごいのは20歳の時に出会ったベンジャミン・グレアムの名著「賢明なる投資家」を今でも読み返し、2つの戒めを心に刻み直していることである。

1つは「ミスター・マーケットと名付けられる、市場の躁うつ病のような短期的な乱高下に一喜一憂しないこと」。そして、もう1つは、必ず「安全余裕率」を持つことである。

「安全余裕率」とは、自動車のハンドルの遊びのようなもので、これが無ければ自動車を安全に運転できない。レーシングカーのハンドルには遊びが無いが、素人にはとても乗りこなせない代物である。

バフェットは、ハンドルにたくさん括り付けられた諸刃のナイフを例に出す。平坦な道路をまっすぐ走っているときには、ナイフとナイフの間を持って運転できる。しかし、道に凸凹があったり、急カーブに突入したら、腕がスパッと切り落とされてしまう。

株式市場で投資をするときの安全余裕率とは、「適正価格よりもさらに余裕を持った(安い)価格で買うこと」である。

例えばトヨタ自動車1株の価格は7000円が適正だと考えたとしよう。すると、安全余裕率を30%と見込んだ場合、30%安い4900円になるまで買わないということである。

 

もちろん、そんなに都合よく株価が下がることは滅多にない。だから、バフェットが購入を検討しても、実際に購入に至らないケースは多いのだ。適正価格で買っても、かなり儲かるのだから「もったいない」と思う読者も多いかもしれない。

しかし、バフェットの「絶対に損をしないこと」という言葉を思い出してほしい。市場ではリーマンショックのような大暴落が「いつかは必ず起こる」。だから、そのようなときにも「絶対に損をしない」安全余裕率を持った価格で購入することが極めて大事なのだ。

彼は、投資を「見送り三振の無い野球」だという。本物の野球では、ストライクを3回見逃したらアウトである。しかし、投資のチャンスを何十回、何百回見逃しても1円の損もしない。

だから、投資家は「ホームランボール」がやってくるまで、ひたすら待ち続けるべきなのだ。バフェットは「次の投資のチャンスがやってこなかったことは一度も無い」と述べている。

ボール臭い球に手を出す必要はまったく無い。

ただし、ホームランボールを見抜く「選球眼」を持たずにバッターボックスに立っていても仕方がない。

だからバフェットがバッターボックスに立つことは稀で、ほとんどの時間を選球眼を強化するために費やしている。具体的には、企業の決算書や公開資料に目を通したり、投資やビジネスに関わるあらゆる種類の本を読むことである。

ボールかストライクかの判断ができ無いようでは、いくらバットを上手に降ることができても意味が無い。

孫子が教えるようにホームランボールを「一撃必殺」で迎え撃たなければならないのだ。