フランスでなぜ「同性婚」が認められたのか、その根本的理由

カギは男女平等の進展にあった
石田 久仁子 プロフィール

子どもをもつことへの期待

その後、2000年代になると、同性カップルの間でも、結婚をして、異性カップルと同じように子どもをもち家族としての生活を送れるのではないかという期待が生まれる。

背景には、フランス社会の変化がある。先に見たように、結婚自体が変容し、親子関係にかつてないほどの価値が与えられるようになる。

加えて、同性カップルがパックス——この制度は親子関係には一切触れていない——によって社会的認知を得たこと、さらには、「出自(生みの親が誰であるか)」と「親子関係」が区別されるようになったこともある。

この区別は、完全養子縁組で実の子として育てられた子どもや、ドナーを介した生殖補助医療で生まれた子どもたちの出自を知る権利運動を通して、徐々に受け入れられるようになった。女性ドナーの出現で生殖補助医療の表象が変化したことも影響している。血縁関係が必ずしも親子関係を規定するわけではないと考えられるようになったのだ。

こうした社会の変化に応えて、2013年、「みんなのための結婚法」が制定され、同性カップルにも結婚の自由が認められた。同時に同性婚カップルによる共同の養子縁組も可能になり、二人の父、二人の母の法的身分が確立した。

同性婚には、当然のことながら「妻の産んだ子を夫の子とみなす」父子関係の推定は、適用されない。この法律について、テリーは「ゲイとレスビアンを結婚と親子関係という社会的紐帯の中心に組み入れることによって、数世紀におよぶ同性愛抑圧に法的な終止符」を打ったとして、高く評価する。

〔PHOTO〕iStock

残された課題

では、同性婚が認められたフランスにおいて、課題は何だろうか。それは、従来の異性婚家族をモデルとする現行の親子関係法がそのまま残っていることである。

法案の準備段階では検討されていた、独身女性とレスビアン・カップルへの人工授精の解禁が見送られたために、これまでの親子関係全体を見直し、多様な家族に共通するみんなのための法的親子関係を再定義することにまで繋がらなかったのだ。

では、テリーは「来るべき親子関係」としてどのような形を考えているのだろうか。

従来の婚姻家族モデルが支配していた時代には、誰が「本当の親」かを問う必要はなかった。婚姻カップルだけが正当な親の資格をもつからだ。

しかしこのモデルが崩れ、親子関係の脱結婚化現象が顕著になると、新たな確かな基準を求めて「本当の親」をめぐる論議が起きる。

 

そこで対立するのが、いわゆる実の親「生物学的親」と、親としての意思を明確にもつ育ての親「社会的親」である。一体どちらが「本当の親」なのか。

テリーは、このような二者択一を迫る図式に異議を唱える。それとは逆に、以下に述べるような、両者を結合する「加算の論理」にしたがい、脱結婚の時代にふさわしい、法的親子関係を考え直すべきではないか、と主張する。

新たな親子関係は、親が異性であるか同性であるかを問わず、すべてのカップルに共通のものでなければならない。

そこでテリーは、今のところ異性カップルだけが受けられるドナーを介した生殖補助医療を同性カップルにも解禁することを提唱する。その上で、生殖と養子縁組という、これまでの二つの親子関係設定方法に加えて、ドナーを介した生殖補助医療を三つ目の親子関係設定方法とすること、そして、この医療を受けて親になろうとするカップルによる「出生に先立つ親子関係共同宣言」の制度化を提案する。