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# 経済・ビジネス

新元号「令和」には、一体どこまで「便乗ビジネス」できるか

ビジネスが成功する「知財」の基礎知識
新元号「令和」が発表されました。改元を記念し、「令和」を冠した食品、飲料、日用品が発売されるなど、「便乗商法」も広がりを見せています。知的財産権に詳しい弁理士で東北大学特任准教授の稲穂健市さんが、これまでの動きを整理しつつ、「令和」にどこまで便乗できるのかについて、解説します。

中国の登録商標「令和」の出願は2017年

元号の選定基準として「俗用されていないこと」が条件のひとつとして挙げられており、実際に、「令和」を冠した会社や商品・サービスはこれまで存在していませんでした。ですから、改元を記念した「便乗商法」自体、現時点では、特に問題となるようなものではありません

 

令和がすでに中国で商標登録されていたというニュースが流れたことから、「中国から文句が出るのではないか?」と思われた方もいるかもしれません。

しかし、商標制度については、各国ごとに登録の効力が及ぶ「属地主義」が採用されていることから、中国における商標権が日本国内のビジネスに直接影響を与えることはありません

じつは、私自身、「令和」発表の数時間後、中国商標局のウェブサイト「中国商標網」で、中国における「令和」の商標登録の存在を確認していました。残念ながら、一番乗りというわけではなかったようで、その時点ですでにネットで同様の話題が確認できました。

テレビやウェブメディアで大きく報道されたのはその翌日でした。ネットの情報をマスコミが後追いするところは平成改元とは大きく異なる令和改元ならではの現象と言えるでしょう。

ちなみに、中国の登録商標「令和」は、出願が2017年11月16日で、登録が2018年10月21日となっていることから、同じ漢字となったのは単なる偶然でしょう。

また、その指定商品が、カクテル、リキュール、ウォッカ、ワイン、ブランデー、ラム酒、焼酎、清酒(日本酒)、ライスワイン、ウイスキーとなっていますので、そもそもお酒関係以外にはその商標権は及びません(商標はそれを使用する商品・サービスとセットで登録されます)。

結局、日本から中国に「令和」という文字の入ったお酒を輸出するなどの限定された場合でのみ問題となり得るということです。

ところで、「令和」は日本国内においては商標登録されていません。また、「令和」以外の元号候補案「英弘」「久化」「広至」「万和」「万保」のいずれについても、日本国内での商標登録は確認できませんでした。

政府が元号案を6つに絞った段階で、すでに「商標チェック」を終えていたのは間違いないでしょう。安倍政権、この辺りは抜かりがありません。

「令和まんじゅう」は商標登録できる?

ところで、これから「令和」を商標登録することは可能なのでしょうか? まずは特許庁に出願して登録を受ける必要がありますが、特許庁の審査基準(今年1月改訂)では、商標が「元号として認識されるにすぎない場合」は、登録できないものとされています。

そもそも「商標」とは、自分の商品・サービスを他人の商品・サービスと区別するための「目印」であり、登録されるためには、大前提として、「識別力」(「目印」となる働き)がなければなりません。

商標登録されて「商標権」が発生すると、権利者は指定した商品・サービスにおいて登録商標を独占的に使用することができ、また、同一・類似の範囲における他人による商標の使用を防ぐことができるようになりますから、「識別力」のない商標を登録するわけにはいきません。

ですから、「令和」など元号そのもの、または、商品「饅頭」について「令和まんじゅう」など、元号とその商品・サービスの普通名称を組み合わせただけの商標は、他人の商品・サービスと区別する「目印」とはなり得ず、商標登録できないのです。

ただし、ここで注意しなければならないのは、「令和」を含む商標であっても、全体として「識別力」があれば、登録可能であるという点です。

実際に、現元号「平成」については、たとえば、スタジオジブリが「平成狸合戦ぽんぽこ」(商標登録第3141473号など)を、フジテレビジョンが「平成教育委員会」(商標登録第4897654号)を商標登録しています。