どうしても島の魅力が忘れられず、数ヵ月後、私は再び小笠原へ向かった。
今度は、父島よりさらに人口が少なく、父島が都会に思える程のどかな母島へ。

前回よりも重症の小笠原中毒になって東京に帰ってきた時には、もう元の生活には戻れなかった。私の心の中には、小笠原の青空のようにキッパリと、力強い思いが生まれていたのだ。

今の生活にしがみつくことはない。
思いきって、自分を変えよう!

脱! 東京!!
海の側に引っ越そう!!
人生の転機となった小笠原ショック。
そして、それがキッカケで、私は長い間忘れていたあの夢を取り戻すことになったのだ。

自然と暮らす場所を探して

小笠原に行くまでは、東京のマンション暮らし程、便利で快適なものはないと思っていた。住み慣れた中目黒を離れることなど、考えたことはなかった。
しかし、一度スイッチが入ると猛然と突っ走るのが私の性格。
「引っ越そう!」と決めた途端に、頭の中は新生活への期待でいっぱい!! 早速引っ越し先を探し始めた。

船で本土から25時間以上かかる小笠原はさすがに無理としても、とにかく海に近いことが第一条件。今まではずっとマンション暮らしだったけど、自然を求めて引っ越すならば、土の匂いや木々の緑を身近に感じられる一軒家がいい!

20代を仕事一筋で過ごしてしまったせいか、単に縁がなかったせいか、うっかり結婚しそこねていた私。30代独身女が一軒家を買うというのは、多少の不安も抵抗もあった。

でもまあ、何とかなるだろ!
人間、こうと決めたら勢いが大事!!

バブルで世間が浮かれていた頃も、遊ぶヒマもなく仕事ばかりしていたおかげで、そこそこの貯えはある。地価のバカ高い都内はともかく、地方ならどうにかなりそうだ。仕事の都合もあるので東京からそう遠くない海の街を探していた所、神奈川県の逗子市にいい場所があるという情報を入手!

当時の私は逗子が古都鎌倉のお隣の市だということさえ知らなかったが、とりあえず偵察に。
おお~~、いい所ではありませんか!
初めて訪れた逗子は、まぶしい太陽と海がきらめく、「ザ・湘南!!」な街だった。
しかも、明るく開放的でゆる~い空気感は、小笠原と共通するものがある。
逗子の山の上に、海を一望できる住宅街を見つけて一目惚れした私は、ちょうど売りに出ていた土地を即断即決!

すぐさま土地の契約をすませ、建築会社との打ち合わせも始まり、怒濤のように新生活に向けて一直線。
まさに、人生大改革プロジェクトのスタートだ。
そして、そんなワクワクする日々の中で、ふと、胸に浮かんだ思いがあった。

もしかして、今なら、犬が飼えるかも……!?

次回は折原さんが幼い頃犬を飼いたい!と思ってからのことやほろ苦い思い出について。4月23日(火)公開予定です。

おひとりさま、犬をかう』:「犬をかいたい」。幼い頃の夢を30代で叶えてから十数年、子犬の育児に悪戦苦闘し、湘南への移住と犬とともに変わった人生。「独身・家持ち・40代」漫画家&小説家がユーモアとやさしさたっぷりに書いたエッセイ。