東京に戻っても忘れられない

私のこれまでの生活は、何だったんだろう?

当時の私は、夜中に仕事をして朝寝るという完全な夜型生活。昼過ぎに起きてまた仕事なので、ロクに外に出ることもなく、お日さまの光を浴びずに1日を終えることも珍しくなかった。

何たる不健康!! バチあたり!!
それって、人間として何か間違ってない!?

そんな気持ちは、後ろ髪をひかれつつ小笠原を後にし、東京に戻った時にさらに大きく膨れ上がった。

おがさわら丸が竹芝桟橋に着岸した時、あれ程美しかった海はすっかりその色を変えていた。透き通ったブルーは、濁ったドブ色に。緑の木々のかわりにそそり立つコンクリートのビル群。地上には人工のネオンが輝いているけれど、夜空の星は見えない。

数日前まで何の疑問も感じず暮らしていた都会の街が、ひどく窮屈に、息苦しく感じられた。

一過性のものかと思っていたけど、何日たってもその感覚が抜けない。

19歳で上京して以来、私は十数年東京で暮らしてきた。
最初は友人と練馬区のアパートに。その後、都心に近い中目黒という街に移り住んでひとり暮らし。中目黒は大好きな街で、荷物が増える度に4回も引っ越したが、ずっと中目黒駅の半径500メートル圏内。

中目黒という街は、渋谷から東横線で2駅。近くにしゃれたショップやレストランなども多く、夜中まで飲んでいてもタクシーでサッと帰れる便利さも魅力だった。

昼夜逆転でガンガン仕事。その合間に、たまにはビシッとメイクして夜の街に繰り出し、大人な雰囲気のバーで飲み明かす。

今までは、そんな生活が気に入っていた。都会的でカッコいいと思っていた。

中目黒の仕事場の折原さん 写真提供/折原みと

でも、小笠原の海と太陽、ゆったりと流れる時間を知ってしまった私には、もうそれが楽しいとは思えないのだ。

ネオンのきらめく街で夜中まで飲んでいても、小笠原の星空や静かな夜の波音が懐かしくてたまらない。着飾るよりもTシャツと短パンで海風に吹かれていたい。ハイヒールなんか脱いで、裸足で砂浜を歩きたい。

たった数日過ごしただけで、人をここまで変えてしまうなんて……。

恐るべし!! 小笠原パワー!!