養育費不払いによる貧困の多さ

祥子さんのように子どもを育てるひとり親が、これだけ苦しい状況であることを知る若い女の子たちは、安心して子どもを産みたいと思うでしょうか。誰にも離婚の可能性があることくらい知っています。

もしそのひとりになったら、自分がすべてを背負うことになるのか、そう考えると子どもを産むことを、人生のリスクと捉えてしまっても仕方がありません。子どもの数自体が減ってしまえば、ますます国は立ち行かなくなるのですから、これは誰にとってもゆゆしき事態なのです。
 
子どもを産まない女性を責める発言をする政治家もいますが、逆に子どもを安心して産める環境を整えて欲しい、そう願います。不安が払拭されれば、子どもを産みたいと考える女性はたくさんいるのです。
 
多くのひとり親が苦しんでいる理由の大きな一つに、養育費が支払われないということがあるでしょう。養育費を支払わない親が実に多いのです。
 
確かに再婚して新しい家庭を持てば、そこでの生活費がかかるので、養育費の支払いまで手が回らないという見方もあるでしょう。しかし、別れた配偶者に託した子どもも、間違いなく自分の血を受け継いだ大切な子であることに変わりはありません。養育費を支払わないのは、虐待していることと同じです。

生活苦に追われ、気持ちに余裕がなくなって我が子に手を上げてしまう親は責められるのに、なぜ養育費を払わないという虐待は責められないのでしょうか。
 
目の前に我が子がいれば、「お金がない」なんて言っていられず、なんとかして子どもにご飯を食べさせていくでしょう。離れて暮らしていたとしても、同じです。「お金がない」は理由になりません。お金がないなら、ダブルワークでもトリプルワークでもして、なんとか支払っていくべきなのです。シングルマザーがそうやって、髪の毛を振り乱して育児をしているように……。大切な我が子のために……。
 
私自身、養育費が支払われない中で本当に苦しい思いをしました。毎月通帳記帳するのが怖くて、これ以上傷つきたくなくて、記帳すらできなかったこともあります。

生活が安定してきて初めて記帳して、やはり数年間一度も払われてなかったということも知りました。経済的に追い詰められてカツカツの生活をしていると、あぁ、ここで養育費があれば……なんどそう思ったでしょう。祥子さんの場合は公正証書も作成しませんでしたが、別れるときに裁判所で養育費の支払いが決められても、払わないのです。これが現実です。

お互いに金銭面で苦しい、そういうことはあるだろう。しかし、「親の責任」が子どもを引き取った母親だけにかかってしまうことが、本当に多いのだ Photo by iStock

離婚してから司法書士となった私は、自分で強制執行等をすることもできます。しかしながら、知識のないシングルマザーが、支払われない養育費の回収を誰かにお願いしようとすると費用がかかります。カツカツで困っている中で、その費用がどこから出るのでしょうか。

そしてなんとか手続きの費用を捻出したとしても、回収できる確率は100%ではありません。差し押さえられて困る親は払います。払わない親はそもそも差し押さえられても払えないから困らないのです。 そのため費用だけがかかり、回収できなかったという無念さだけが残ることが 大半です。結局、泣き寝入りをするしかないのが現状なのです。
 
また中には暴力等から逃げるように、養育費の取り決めすらできずに別れてしまう夫婦もいます。
 
犠牲になるのは、親の、そして国の宝である子どもなのです。
 
特にシングルマザーの平均年収は、一般世帯より格段に低い状態です。その中で養育費すら支払われない追い詰められた環境。これが子どもたちにとって、いいはずがありません。
 
貧困は、心を蝕んでいきます。人から笑顔も奪います。追い詰められた生活は、心から余裕を奪っていきます。どうかすべての子どもたちが笑っていられるよう、決して貧困の犠牲とならないよう、養育費が確実に支払われる制度制定を心から願います。

太田垣さんが16年間にわたり、のべ2200件以上見てきた「家賃滞納」の現場のリアルなルポルタージュと背景分析をまとめた一冊。エリート社員が家賃滞納になってしまったり、貧困の連鎖が起こっていたり、必死で努力していてもほんの小さな躓きから家賃滞納に陥ってしまったり……他人事ではない「現実」が凝縮されている。