今回の賃貸借契約は、契約者が圭吾さんのままです。裁判は圭吾さんといま部屋を使っている祥子さんが被告になります。これだけの滞納額があれば、間違いなく明け渡しの判決が言い渡され、それでも退去してもらえない場合には強制執行の手続きとなります。
 
つまり祥子さんたちは、遅かれ早かれ、この物件から追い出されてしまうことになるのです。執行の手続きで荷物等が部屋から運び出されるくらいなら、自分たちで退去した方が精神的にもお子さんのためにも良いはずです。
 
ところが祥子さんの収入は、月に手取りで12万円ほどでした。その中から家賃と生活費を払うとなると、そんな安い物件は民間では考えられません。公的な住宅に入居できなければ、生活そのものが成り立ちません。このままいくとあと3カ月ほどで、強制執行できるタイミングが来てしまいます。

いきなり夫から別れを切り出された

「この先、どうやって生きていけばいいのですか ?」
 
祥子さん曰く、圭吾さんはほかの女性と関係をもち、別れを切り出してきたそうです。ある日突然「離婚してくれ」といわれ、専業主婦として生活をしてきた45歳の祥子さんがすべてを託されました。20年以上専業主婦をやってきてパソコンさえ使えない祥子さんにとって、親子3人で生活していけるだけの収入を得られる自信はありませんでした。

しかも、離婚の際に調停をしたわけでもなく、公正証書の存在も知りませんでした。
 
「離婚の条件を公正証書に書いてもらうのですか?そんなこと何も知りませんでした。判を押す前に、もっとちゃんと勉強しておけばよかった……」
 
公正証書にしておけば、約束の支払いが滞ったら差し押さえすることも可能です。しかし給与差し押さえようとしても、どこに勤務しているかどこに住んでいるかも分からなかったらできません。公正証書を作成したところで、お金を支払ってもらえるとは限らないのです。
 
「これからの時代、女は絶対に仕事を持っていないとダメですね。私みたいに専業主婦をしていたら、いざ働きに出ようと思っても仕事が限られます。男性はいいですよね。離婚しても身軽になるだけで、何も変わらないんですから」

祥子さんのご両親も亡くなっています。

「兄がいますが、兄だって生活があるし、兄嫁と私はあまり仲良くないし。とても援助してなんて言えません。引越し代金くらいなら泣きつけるかもしれないけど、それ以上は甘えられません。離婚した人って、みんなどうやって生活しているんですか?」
 
結局、祥子さんは、運よく公営住宅に転居することができました。それでも3万円弱の家賃は、払っていかねばなりません。今までのように生活費だけでは済まされず、親子3人の生活は激変しました。お子さんふたりが社会に出られるまでは、かなり厳しい生活かもしれません。

家賃を払ってくれることが、養育費だったのに……

祥子さんの悲痛な言葉をよそに、母子を陥れた圭吾さんの行方は分からずじまいです。