# がん

もしがん患者になっても「仕事を続けた」ほうがいい3つの理由

おカネのためだけじゃない
黒田 尚子 プロフィール

恭子さんによると、もし罹患後、会社を辞めてしまっていたら、身体的には楽だったかもしれないけれども、気持ちは落ち込む一方だったかもしれないという。

「家でじっとしていると、なんだか悪いことばかり考えている自分がいて。治療と仕事の両立は大変でしたけど、あと○回で治療が終わると思えばガマンできました」

あるがん専門医曰く、「受け入れる会社側にとっては、色々と大変だろうが、患者さんにとっては、早く仕事に復帰した方が気持ちや生活にメリハリが出て、良い方向にいくことが多い」そうだ。

理由その3「生きがいのため」

最後の理由は、働くことでやりがいや生きがいを感じることができるというもの。
また前述の恭子さんに登場していただこう。

「勤務先の雇い主側の反応は最悪でしたけど、働くことや仕事自体は本当に好きだし、楽しいです。実は、学生時代から趣味でビオラを続けていて、定期演奏会などにも参加しています。こちらもやっていて楽しいし、それなりに達成感はあるんですが、自分の仕事による『認められた感』とはまったく別物ですよね。

とくにがんに罹患した後は、なんだか自分が社会から取り残された存在のような気がして…。でも、仕事をすることで、がんになっても、自分の価値を認めてもらえるというか、自分は必要な存在だと実感できたんです」

恭子さんのように、働くことで、自分らしく生きることを体現できたり、社会とのつながりを実感したりする患者は少なくない。

仕事は、家計を維持するための「生活の糧」であると同時に生きるための「人生の糧」でもあるのだ。

 

絶対すべきでないのは、安易に仕事を辞めること

実際、病気になっても、働きたいと考える患者は多い。

厚生労働省の「治療と職業生活の両立等の支援事業アンケート調査」でも、がんや脳血管疾患、心疾患などの病気を抱えながらも仕事を続けたいとする人が92.5%にものぼる。

一方、労働者ばかりでなく、雇用者にとってもメリットは少なくない。

継続的な雇用を確保することができるし、労働者のモチベーションが向上することで生産性がアップするためだ。ただし、前述の恭子さんの勤務先のような中小企業では、このような意識が浸透しているとは言い難い。

いずれにせよ、筆者は、病気になって仕事を辞めようか、継続しようか悩んでいる方には、上記の3つの働くべき理由をお話しながら、こうアドバイスしている。

「もちろん、ご本人は病気なわけですから、治療や体調が最優先されます。しかし、会社を辞めるのはいつでもできる。そして、再就職は予想以上に大変です。辞める前には、経済的な見通しを見極めておくこと。絶対に避けたいのは、何とかなるだろうと安易に仕事を辞めてしまうことです」と。