# がん

もしがん患者になっても「仕事を続けた」ほうがいい3つの理由

おカネのためだけじゃない
黒田 尚子 プロフィール

もちろん、がん罹患後の収入減少の期間が数ヶ月程度の一時的なものであれば、預貯金を取り崩したり、民間保険でまかなったりして、家計に大きな影響を与えるほどではない。

問題は、収入減少が中長期にわたり、継続的に起きた場合である。そうなると、毎月の生活が苦しくなるだけでなく、賞与や昇給にも反映されて年収が減少。いずれ定年退職時の退職金の額や、将来受け取る公的年金の額も減少する可能性がある。

要するに生涯年収にも関わってくるわけだ。ライフプランを考える上で、これは深刻な問題となのだが、多くの患者は、毎月の給与の減少にばかり目が行き、中長期的な視点は見落としがちになる。

会社員の場合、年収のピークは50歳代前半で、その後、定年が近づくにつれて下がっていくのが一般的。それが、年収が大きくアップする可能性の高い40歳代にがんに罹患してしまうと、収入がピークアウトする時期が早まり、生涯年収への影響が避けられない。

 
理由その2「健康維持のため」

続いて挙げられるのは、健康維持のために仕事を継続すべし、ということである。
健康を保つことが働くための前提条件だとすると、何だか矛盾するようだが、働くことは、ココロとカラダの健康につながる。とくに、歳を重ねるごとにそう感じるのは筆者だけだろうか。

もちろん、患者本人の病状や治療の副作用、スケジュール、業務内容、職場の環境によっては、職場復帰が難しいケースもある。

しかし、本人の働きたい、職場に戻りたいという強い意思があり、それを迎える職場の理解や環境が整っているのであれば、働いた方が、患者にとって精神的にも身体的にもプラスになる場合が多いと思う。

〔photo〕iStock

前述の恭子さんは、術後の再発予防のために、半年間の抗がん剤治療を行なったが、ずっと仕事は続けていた。治療中は、とにかく副作用で体調が悪くなり、週末はほぼ寝たきり状態。掃除や洗濯などの最低限の家事だけなんとかこなし、食事はレトルトのおかゆやゼリーを口にする程度で、ひたすら休んでいた。それでも、週明けには、ちゃんと起きて定時に出勤できたという。

「会社に行かなくちゃいけないと思うと、なぜかしゃっきりするんですよね(苦笑)。多少、気分が悪くても、仕事で忙しかったり、同僚とおしゃべりをしていると気が紛れるというか、一瞬でも病気のことを忘れている自分がいるんです」