日本の上空を覆う米軍の巨大な壁…「横田空域問題」を知っていますか

世界的にみても異例です
角川新書編集部

トランプ来日時の「パフォーマンス」

――日米合同委員会では具体的にはどんなことが決められているのでしょうか。

「今のところ分かっている密約は10あります。そのうちの一つが『航空管制密約』です。

ほかにもたとえば『民事裁判権密約』というのがあります。米軍機の墜落事故などの被害者が損害賠償を求める裁判にアメリカ軍側は不都合な情報を提供しなくてもいい、というものです。『日本人武装警備員密約』というのもあります。これは米軍基地の日本人警備員に、銃刀法上は認められない銃の携帯を特別にできるようにするものです。

一読してわかりますが、これらの密約は日本の主権を侵害し、憲法を頂点とする法体系を無視して、米軍に事実上の治外法権を認めるものです。つまり、憲法の上に日米合同委員会による取り決めがある、というわけです。

憲法を頂点とした法体系が統治する国家が、法治国家ですよね。その上位に別の法体系があるなどと、信じられないのも無理はありません。しかし、これは事実なのです。

私が独自に信頼できるルートを通じて入手した在日米軍司令部の内部文書「JOINT COMMITTEE AND SUBCOMMITTEES」(「合同委員会と分科委員会」、2002年7月31日付)でも、日米合同委員会の日米双方の代表は、それぞれの『政府を代表』し、『合同委員会の合意は日米両政府を拘束する』と書かれているのです。

現実に目を移してみてください。法律で定められていない巨大な空域があり、実際に民間機が通れないのです。

トランプ大統領が初めて日本に来た時のことを覚えていますか。2017年11月のことですが、トランプ大統領は東京都の西部にある横田基地に降り立ちました。それまでの大統領は外交儀礼に沿って公共施設である羽田空港から入国していました。

なぜ羽田ではなく、横田基地に降り立てたのでしょうか。横田空域があったためです。日本におけるアメリカの軍事力を伴う特権的地位を見せつける意味もあったと思います」

 

広すぎません…?

――ただ世界的な傾向として、基地や空域はその国に返還する方向にあると聞いていますが。

「アメリカ軍は日本政府の求めに応じて、これまで8度にわたり、空域の削減(一部返還)をしてきました。しかし、アメリカ軍側が全面返還に応じる気配はありません。

横田空域を管轄しているのは東京都の西部にある横田基地ですが、総面積は約7.14平方キロメートルあり、東京ドーム150個分に相当する広さです。横田基地は、アメリカ本土やハワイ、グアム、韓国などにある米軍基地の中継地点ともなっています。 

横田基地周辺の住民からなる市民団体『羽村平和委員会』によれば、横田基地への米軍機の飛来回数は、2013年から5年連続で毎年1万回を超えています。つまり、横田基地は軍事空輸のハブ基地としての役割があり、輸送機などの円滑な出入りのために横田空域の管制権を握ることは、米軍に非常に有利というわけです」

――横田空域は群馬県や福島県、新潟県や長野県まで覆っています。広すぎませんか。

「そうですね。もう一つのメリットと関連してくるのですが、この巨大な空域で飛行訓練、具体的には低空飛行訓練や対地攻撃訓練(射爆撃は伴わない)が行えるということがあります。低空飛行訓練というのは、読んで字のごとくなのですが、日本の航空法では、飛行の最低安全高度を市街地など人口密集地では300メートル、それ以外では150メートルと定めています。

しかし、米軍機については地位協定に伴う航空法特例法によって適用除外とされていて、たとえば米軍ヘリコプターが市街地の上空を150メートルほどの高度で飛んでいるのが、東京都港区の市民団体によって確認されています。

ほかにも対地攻撃訓練というのがあり、ダムや建物などを標的に見立てて急降下・急上昇したりすることです。たとえば群馬県前橋市にある室内競輪場の上空を頻繁に米軍機が飛び交っていたことが確認されています。その円形の大きな建物が、訓練の標的にされたとみられます。

巨大な空域は、民間機が入ってくる心配もなく、自由に訓練できますから、米軍にとっては非常に好都合なのです。

2003年のイラク戦争のときには、横田空域など日本の空で訓練した米軍の戦闘攻撃機などが、横須賀基地から空母に積まれてペルシャ湾に運ばれ、イラクを空爆しました」