日本の上空を覆う米軍の巨大な壁…「横田空域問題」を知っていますか

世界的にみても異例です
角川新書編集部

日米合同委員会って?

――政府が法的根拠の文書を開示しない状態だということはわかりました。とはいえ、だれかが決めたわけですよね。だれがどうやって決めたのでしょうか。

「日米合同委員会という組織で決められました。これは日本の外務省北米局などのエリート官僚と、アメリカ軍の高級軍人によって開かれている協議機関です。1952年に日米行政協定(現地位協定)によって設置されました。名前は知られていますが、議事録や合意文書は原則非公開です。ここでアメリカ軍の基地使用や軍事活動の特権、地位協定の具体的な解釈などが話し合われています。隔週木曜日に開催されているのでかなりの高頻度ですよね。

日米合同委員会は、外務省のホームページによれば、36のさまざまな分科委員会や部会などがあります。巨大な組織といえます。そこでは、たとえば米軍の基地や演習場の場所の決定、土地の収用、滑走路などの建設、騒音や墜落事故の被害者への補償、米軍関係者の犯罪の捜査や裁判権、基地の環境汚染など、さまざまなことが議題に上ります。

これほど多岐にわたることが話し合われているのに、議事録や合意文書は原則として非公開、密室での協議です。それが数々の密約を生み出してきました」

 

――その日米合同委員会と横田空域や岩国空域はどう関わっているのですか。

「日米合同委員会では、米軍に航空管制を法的根拠もなく事実上委任するという秘密合意すなわち密約が結ばれました。その存在は、1983年作成の外務省機密文書『日米地位協定の考え方・増補版』(地位協定の具体的な運用を解説した外務官僚用の裏マニュアル。『琉球新報』が入手して報道した)で言及されています。

それは1975年の「航空交通管制に関する合意」です。航空法に根拠となる規定はないが、米軍に基地とその周辺における航空管制を『事実上の問題として委任した』というものです。日米安保のため民間用と軍事用の航空管制に関し、日米間の協調と整合を図るという日米地位協定第6条の趣旨に基づくとされます。

『事実上』という言葉は、正式ではないが、実際に行われていることを黙認する場合に使われるものですよね。つまり航空法にも、地位協定にも正式な根拠規定はないけれど、米軍が既成事実として行っているので、特権として認めるということを意味します。

【PHOTO】gettyimages

この合意文書そのものは非公開です。要旨だけが外務省ホームページで公表されていて、そこには、基地とその周辺における米軍の航空管制を「認める」とだけ書かれています。事実上の「委任」という部分は隠されているのです。まさに密約です。私はこれを『航空管制委任密約』と呼んでいます。

『密約』というと陰謀論のように聞こえるかもしれませんが、これは私が想像で言っているのではなく、裏付け資料があることなのです。

どんな資料かといえば、たとえばアメリカの国立公文書館には日米合同委員会の非公開議事録があります。こういった文書は、秘密指定の期間が設けられていますが、それが解除されると開示されるのです。また日本でも法務省や警察庁や最高裁などの秘密資料や部外秘資料が見つかっています。これは、日本の官僚や裁判所の関係者が亡くなったときに遺族が蔵書を整理するなどし、古書店などに持ち込まれたものだと思われます」