2018年10月、日本経済団体連合会(以下、経団連)の中西宏明会長が、「採用選考に関する指針」、いわゆる“就活ルール”を、2021年春入社組から廃止すると発表し、反響を呼んだ。
“就活ルール”とは、説明会や選考の“解禁日”を示す経団連独自のルールだ。これがないと、優秀な学生は獲り合いになるため、内定の時期がどんどん早まるなど、露骨な青田買いが行われてしまう。学生や大学にとっても迷惑だが、採用側も疲弊してしまうため、ヨーイドンのルールを作っていた。
ただし、外資系企業やベンチャーなど経団連に加盟していない企業は何の制限もないため、経団連企業は不利。究極の買い手市場の中で、採用に苦しんでいた。そこで早めにこっそり内内定を出して、解禁日に正式な内定を出すなど、ルール違反スレスレの行為が横行していた。
ここ数年は、毎年のように解禁日が変わるなど混乱を極め、ついにもう、就活ルールを廃止しようということになったわけだ。
採用指針が廃止されれば、企業も動きやすくなり、人材確保がしやすくなるという歓迎の声もあれば、中堅・中小企業はより一層苦しくなるだろうという不安の声もあった。また、就職活動の早期化や長期化に拍車がかかり、結局は企業も学生も負担が増えるだけという悲観論もあった。
すると経団連の就活ルールに代わって、政府が新たな“就活ルール”を発表した。昨年10月29日、政府は就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議を開催。「現時点においては、急激なルールの変更は学生に混乱を生じさせるおそれがある」とし、ルールを策定。
政府は国内約1100の経済・業界団体に対して、順守を要請する文書を発送したという。つまり、経団連の枠を超えて、日本に存在するほぼすべての企業を対象にした統一のルールを作ったのだ。
蓋を開けてみると政府の就活ルールの骨子は、これまでの経団連の就活ルールを踏襲する内容だった。これを見ると、政府と経団連が結託して全企業に就活ルールを適用させたようにも思うが、ともかく、政府による主な要請内容は以下の通りである。
結局のところ、経団連の“就活ルール廃止”と、政府の“新就活ルール”は就職活動にどのような影響を与えるのだろうか?