民事再生からV字復活を遂げた「究極のシニアビジネス」の手法

キーワードは「100%顧客目線」
長谷川 あや プロフィール

「根拠がない顧客目線」からの脱却

新たに生まれ変わった『ハルメク』の編集方針は、「読者の満足度を最優先し、読者本位の記事を掲載する」ことだ。

「読者アンケートを実施していましたが、数値を取るだけで、分析をせずに終わってしまっていました。これを、ひとつひとつの記事に対する読者満足度を調べるかたちにして、その結果をしっかり分析するようにしました」

読者のリアルな声を得るために、ほかにもさまざまな施策を行っている。例えば、2000人を超える読者モニターを使い、アンケートだけでなく、座談会を頻繁に実施。顧客理解を深めるため、2014年には、社内シンクタンク「生きかた上手研究所」を設立した。イベントも多数実施しており、そこでシニア女性の生の声を聞くこともできる。

こうして得た読者や顧客の声を、『ハルメク』では、雑誌の編集や通販用の自社商品の開発に活用している。この「100%読者目線」のコンテンツづくりこそ、ハルメクの好調の最大の要因といっていい。

「着心地がよくてすらっと見える服が欲しい」という読者の声から誕生し、2016年に誕生してから初年度3.7億円もの売り上げを記録したという「セリジエ・3D計測シリーズ」などがその代表例だ。55歳~65歳130名の体型データを分析し、サイズのセレクトも通常のS/M/Lのみならず、体型別に用意。それらの組み合わせで多くのパターンを選択できるというもの。これで、返品率も下がった。

「シニアをステレオタイプで捉えず、シニアが本当に求めているものを探り、企画や商品を考えることが大事です。読者目線で作る雑誌を通して、信頼を獲得し、お客様本位で作った商品を売る──。それが弊社の強みです」

宮澤さんが躊躇なく手の内を明かすのは、前身の会社から引き継ぎ、発展させた、ハルメクのビジネススキームは他社では真似できないという自信の表れだろう。

 

品質管理と、即対応

「商品に何かあったときの対応も、ほかの企業の10倍くらい早いと自負しています」

ハルメクの売上高103億円(2018年3月期)のうち、約8割を通販事業であげており、うち7割は自社開発のオリジナルだ。先日、その数少ない他社製品である、小型家電に関する苦情があった。とっての部分が取れてしまい、危うくやけどをしかけたという。商品を取り寄せてみたところ、「構造的に無理があり、品質が保たれていない」ことがわかり、すぐにリコールをかけたという。このように迅速で誠実な対応を積み重ね、顧客からの信頼を獲得している。

通販事業で人気のオリジナル商品の一部。人参ジュースや骨盤底筋サポートショーツは定番人気商品だとか。

取材の最後、宮澤さんに、企業が発展するために大切なことは何かを聞いてみると、少し考え込み、「大きな組織であれ、小さな組織であれ、リーダー次第だと思います」。では、そのリーダーに求められること、必要なことはなんなのだろうか。

「社員に、明確な目標を見せられること。そして、いろいろな意味で、組織を活用できることだと思います。

正直、弊社をまわしている原理は10個くらいで、すべて説明がついてしまいます。ロジックや戦略がなくても、うまくいく場合もありますが、成功率は決して高くありません。みんなが頑張っているという根性論だけではだめで、終始、考える組織でありたいと考えています」