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# 政治・社会

平成と令和のあいだで…「象徴制やめますか? 続けますか?」

生前退位に込められた天皇からの問い
4月16日から発売される伊藤智永著『「平成の天皇」論』。それに先立って本日は、第1章「平成の象徴再定義 なぜ天皇は退位するのか」の一部を特別公開。平成の天皇の生前退位に込められた「思想爆弾」とは何か? この問いかけに向き合わずして令和は迎えられない!

平成の玉音放送

昭和天皇による終戦の玉音放送をどう聞いたか、各々の聞き取り方は、後から振り返ると戦後の日本人一人一人の生き方を予兆していた。

 

歴史の画期とは、時代と個人との間に得てしてそのような黙契が交わされることで作られる。同じように、平成の天皇による事実上の退位表明だった「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」放送にも、次の時代を先取りする射程の長い問いかけが聞き取れる。

2016年、広島と長崎、2つの原爆忌に挟まれた8月8日、猛暑の午後3時。ビデオ録画で生前退位のお気持ちを述べる天皇とテレビ画面を通して対座した。

始まってすぐ、想定よりはるかに踏み込んだ内容、明晰な論理、ふくらみある言葉づかいの数々に驚いて思わず居ずまいを正し、初めて耳にする名曲の演奏に全身で聴き入る態勢になった。

「おことば」と平易な用語に置き換えられても、戦前で言うところの「勅語」である。勅語を謹聴するとなれば、日本国憲法の制定趣旨である「民主的な象徴」より、戦前的な「君と民」の関係に比重が傾く恐れもなしとしない。

戦後も天皇制は一面、立憲君主制であることに変わりはない。象徴天皇制は絶えず民主主義との危うい均衡の上に正当性を保っている。だが、このとき謹聴したのは、「君主と国民」の権力関係からそうなったというより、メッセージの巧緻性に引き付けられたからだ。

おことばは「戦後70年という大きな節目」から語りだされ、2年後の「平成30年」に言及し、「私も80を越え」というように、冒頭から3つの数字を差し出してきた。

それぞれに込めた天皇の心中を推量し、含意にハッとする。これらの数字は、これから述べる「メッセージ」について、問題をどの範囲で考えるべきか、議論の土台(戦後70年)、日本人男性の平均寿命(81歳)、措置の期限(平成30年)を設営するようあらかじめ婉曲に促していたのかもしれない。

実際にその後、退位のための特例法は、平成30年を意識しながら制定された。