「はやぶさ2」はこうして巨大爆弾を「リュウグウ」に打ち込んだ!

山根一眞の科学者を訪ねて三千里【1】
山根 一眞 プロフィール

「間違いなく世界初ですね。世界のどの宇宙機関も、こんなバカげたこと、というか恐ろしいことはやらないでしょう」(同書)と、インパクタの開発を担当した「はやぶさ2」チームの佐伯孝尚さんは語っていた。

佐伯孝尚
  インパクタの開発を担当した佐伯孝尚さん(写真:2019.04.04、JAXA)

また、インパクタの「衝突装置爆薬部」の開発製造を担当した日本工機白川製造所の加藤久敦さん(研究開発部開発第一グループ主幹、取材時、工学博士)は、こう明かしていた。

「JAXAさんからの最初のリクエストは、2kgのインパクタを秒速2kmで小惑星に衝突させたい、というもので、重量やサイズの制限はなかったんです」

それなら簡単だと30kgの円筒形のものを考えていたが、サイズ、重量ともどんどん制限が大きくなり、最終的に10kgに仕上げたのだという。銅円盤が少し凹んだかたちで取り付けられているのは、コンピュータによるシミュレーションを繰り返し、飛翔しながら最終的に球形で小惑星に衝突するよう設計したからだ。

日本工機
  2014年夏、インパクタの開発取材で訪れた日本工機で(写真:山根事務所)

こうしてできた試作品を、日本工機では2分の1サイズで何度も実験。またJAXAは、岐阜県神岡の実験場で2011年と2013年の2度、合計8回の発射実験を行い成功している。

このインパクタの分離直後、「はやぶさ2」は衝突で飛び散る岩石などを避けるため小惑星の影方向に急いで逃げる移動を続けながら、18分後に、「DCAM3」という通信機能付きのカメラを分離。クレーター生成を記録する計画だった。

澤田弘崇<
  span>JAXAのDCAM3開発チームの澤田弘崇さん(写真:2019.04.04、JAXA)
DCAM3
  DCAM3(JAXAの資料を一部改変)
橋本樹明
  4月5日、プレスルームで初めて披露されたDCAM3のエンジニアリングモデル。手にしているのは、初代「はやぶさ」での大きな役割を果たした宇宙研の橋本樹明教授(写真:山根一眞)拡大画像表示

この日、最初の気がかりは、「はやぶさ2」からインパクタが無事に分離できたかだった。その確認データが届く予定時刻が近づくにつれて、プレスセンターは静まり返り、記者、カメラマンは固唾を飲んで報告を待った。

ついに来た「その時」

地球からおよそ3億kmの位置のリュウグウから電波が地球に届くのに17分かかるのだ。

「はやぶさ2」との通信は臼田宇宙空間観測所(長野県佐久市)の直径64mパラボラアンテナを主に利用するが、この日は強風のため安定受信が難しく、急遽、「はやぶさ2」ミッションで協力関係あるNASAの深宇宙ネットワークの豪州キャンベラ局を通じて交信することになった。そのため「データ処理に時間がかかる」とのコメントがあったが、その後の情報は信じられないほど滞ることなく、伝えられた。