息子を『お父さんに会いたい』と言わない子にしてしまっていました。このままではいけないと思い、思い切って元夫にメールをしたんです。『来週、ごはんに連れて行ってあげてください』と。これまで元夫のメールを散々無視してきたのに、何を今更、と言われるのではないかと不安でしたが、すぐに『ありがとう! 喜んで』という返事が返ってきました」

聡子さんはホッとし、ありがとうを言われていい気分になった。一気に気持ちがほどけた

「息子に『来週、お父さんがごはんに連れて行ってくれるって』と伝えたら、すごく嬉しそうな顔をして。私の口から『お父さん』の単語が出たので安心したのでしょう、それからは嬉しそうに父親の話をするようになりました。『こんなもの食べた』『こんなとこに行った』。私も、それまで顔も見たくない、声も聞きたくない、メールの文字も拒否してしまうみたいな感じだったのが、全然平気になり、ストレスから解放されました」

わずか1通のメールをきっかけにし、子どもを挟んで、元夫婦の関係性はあっという間によくなった。離婚から1年と少し経っていた。

-AD-

離婚したことを子どもに言えずにいた

実は聡子さんは、離婚をしてもしばらくの間、息子に「離婚をした」という事実を告げられずにいた。
「息子にきちんと正対する勇気がなくて…」

調停での話し合いで、住んでいる家はそのまま聡子さんと息子が住み続けられることになり、名前も旧姓には戻さなかった。今までも父親は不在の日が多かったから、息子にとっての環境が大きく変わったわけではなかった。息子から質問されることもなかったので、なんとなく離婚したことを言わずに時の流れに身を任せていた。

「ある日、学校に提出する書類を息子に見られてしまったんです。父親の名前を赤で削除して、離婚した旨をメモでつけた書類です。封をして息子に持たせたんですが、先生がその場で開いてしまった。息子はショックを受けたと思います。だいぶ経ってから『なんで言ってくれなかったの』と。悪いことをしました」

父親の名前を削除したのは、「離婚をしたら片親になる」と思い込んでいたことの表れだった、と聡子さんは振り返る。

親であることは変わらない

聡子さんが元夫にメールしてから、父と子の交流は増えた。月に2回は週末、泊まりに行くことが恒例に。元夫は喜び、そのために広い部屋に引っ越しもした。それまで料理をしなかったのに、手作りの料理をふるまいもする。

「行くと、一緒にテレビを見ながらタレントの誰それがかわいいとか俺はこっちが好みだとか、男同士の会話を楽しんでいるみたいです。あと、社会問題について話したり、日経新聞を読ませて要約させたり、私にはできないことをしてくれています」

もうすぐ中学3年生になる息子は、そろそろ反抗期。巣立ちを後押ししてくれる男親の存在は、これからますます必要となる。

離婚をしても、子どもの親であることは変わらないんですよね」

聡子さんの言葉には、実感がこもっている。