日産自動車の「社外取締役」「指名委員会」に期待できない理由

建て前だけのガバナンス
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ポストが欲しいだけ

社内から選ばれた取締役は経営者にノーを言えない立場で、社外取締役も結局社長が呼んできた都合のいい人物。月1回だけ会社に顔を出し、社長と食事をして帰るだけの役員を集める意味がいったいどこにあるのか。

経営コンサルタントの中沢光昭氏が言う。

「ガバナンスにかかわる制度や人材は本来、世間一般の良識の範囲で、株主や社員にとっての利益をどれだけ最大化できるか、と考えるために設けられるものです。ところが企業にとって社外取締役とは見栄えが良く、内情に口を出さない人物が理想になっている。

今回の日産のように不祥事があった場合、社外取締役は会社より自分の利益を優先していた、と厳しく評価されるのが妥当です。

井原氏や豊田氏といった社外取締役に本気で仕事をさせる仕組みを作るのであれば、取締役の報酬をゼロにして、代わりに日産の株を私費で買い、一生懸命経営改善に努めてもらうくらいの覚悟が必要だと思います」

単なるアリバイ作り

そもそも、会社には長年の歴史や文化がある。輝かしい経歴の人物をいくら集めたとしても、社外取締役という制度自体に限界はある。

元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏は、スルガ銀行の社外取締役を'18年まで務めていた。投資用不動産などの不正融資に揺れたスルガの取締役会について、成毛氏はこう語る。

「社外取締役なのに不正融資を知らなかったのかと聞かれることはありますが、そもそも取締役会で具体的な融資業務の内容について触れられること自体がなかったんです。

スルガ銀行に関して言えば監督官庁である金融庁も不正融資に気づかなかった。いずれにしても、社外取締役さえ置けばうまくいくと考えるのは早計ではないでしょうか。

日本と海外では社外取締役の役割や仕事は大きく異なります。マイクロソフト時代、本社取締役会は主要子会社の持ち回りでした。観光気分で取締役会に来るかと思いきや、経営方針について2日間カンヅメになって議論をしていた。

一方で日本は取締役会の出席率なんかが評価の対象になります。ガバナンス体制を整えているというアリバイ作りが最大の目的になっているとしか思えません」

 

'15年に金融庁がコーポレートガバナンス・コードを示して以来、社外取締役は爆発的に増えた。'18年の日本取締役協会による調査によると、社外取締役を2人以上選任している企業は約2000社、のべ6000人近いポストがある。

さまざまな会社の要職を兼任している場合がほとんどで、件の榊原氏も、東レの特別顧問やNTTの社外取締役を兼ねている。

大手電機メーカーの元役員が言う。

「大手になればなるほど、社外取締役に就くのは著名な教授だったり現職の社長だったり、多忙な人が多い。そういう人は『この事業はなんのためにやるんですか』とか、全部報告書に書いてある質問をしてくる。

そんな人たちがトップ人事を決めていいものなのか。委員会を設置してもムダなんじゃないかと感じましたよ」

仏作って魂入れず。ほとんどの日本企業のガバナンス制度は、はりぼてでしかない。

「形だけでも整えないと、海外の投資家にちゃんとした会社として認められないから、とアメリカの真似をしているだけでしょう」(前出・成毛氏)

ゴーン氏のようなワンマン経営者を追い出しても、結局何も変わらない。綺麗ごとのガバナンスを並べるだけでは、企業はむしろ腐っていくだけだ。

今週の週刊現代ではこのほかにも、天下り官僚の例などにもふれながら、特集で掲載している。

「週刊現代」2019年4月20日号より

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