日産自動車の「社外取締役」「指名委員会」に期待できない理由

建て前だけのガバナンス
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建て前だけのガバナンス

今回の委員会の提言もこの時流に沿っており、聞こえはいい。だが、株主や社員は気づいている。お手盛り感満載の第三者委員会がルールを決めたところで、日産は何も変わらないことを。

「問題は、榊原氏が日産の社外取締役を務め、そのまま取締役会議長を務めるという見方が強まっていることです。榊原氏は一時的に日産の経営陣を決める非常に強い権限を持つことになる。

日産でのキャリアはゼロ、76歳の実業家が突然会社の未来を決める立場に就くとなっては、株主や社員が納得できるはずがない」(全国紙経済部デスク)

おまけに、6月の株主総会に向けて取締役会メンバーを選ぶ「暫定指名・報酬諮問委員会」のトップには井原氏が就任することが決まった。そもそも、ガバナンス委員会は、西川廣人社長をはじめとする日産トップの招集によって集められたものだ。

西川社長は委員会の報告書に「大変重い。提言をできる限り実現していく」と神妙に語ったが、「手前味噌の決定で会社は良くならない」と首をかしげる社員も少なくない。

日産の幹部社員が言う。

「ガバナンス委員会が作られたのは『ルノーから日産を守るため』という意味合いが大きいです。ルノーに経営を握らせないために、独自でリーダーを決める仕組みを作る。この方針は組合も含めて納得しています。

とにかくルノー色を排していきたい気持ちが日産社員には強いですから。

ただ、実質的にガバナンス委員会が企業統治を行うことについては、『そりゃ聞いてないよ』と言う社員が多い。井原さんや豊田さんは経営もものづくりも素人。

なんでカーレーサーや天下り官僚が、俺たちの上に立つのかと。そもそもゴーン氏の暴走を止められなかった張本人たちでしょう。

OBと話すと、『こうした状況なら、トヨタから人材を貰って立て直したほうがマシだ』と言う人すらいますよ」

 

ハナから「第三者委員会」と呼ぶことすら憚られるようなメンバーで、指名委員会の設置と社外取締役の追加は決まった。

カリスマ経営者の逮捕という未曽有の事態が起こった日産のみならず、日本企業の「建て前ガバナンス」を疑問視する向きは多い。創業家の潮田洋一郎氏が指名委員会を牛耳り、前任を解任して自身をCEOに立てたリクシルもその一例だ。

元ペンタックス社長でエクスキャリバー代表取締役の浦野文男氏は語る。

「創業家やカリスマ社長が絶対権力を持った過去がある日本企業では、いくら制度を整えたところで旧態依然とした企業文化から抜け出せないケースが多いです。

近年大企業でトップの不祥事が頻発しているのも、取締役会が社員や株主のために組織を是正できない体質に原因があると感じます」

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