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大阪ダブル選に感じるモヤモヤの正体〜勇気ある行動か、横暴な決断か

代表者の役割とは何か?
松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が入れ替わって出馬した大阪の「クロス選挙」。通常の「出直し選挙」であれば、両者の任期は現在と変わらない(今年11月、12月まで)が、クロス選挙にすることで任期が一気に延長される。これを受け、クロス選挙が脱法的な行為だとする指摘もある。

しかし一方で、「多少、法律のキワを歩くような選択も、一度人びとに信任された『代表』が目標を実現するためなら許される」という主張にも説得力がないわけではない。このモヤモヤをどう考えればいいのか。政治理論のなかでも、「代表論」を専門とする早川誠立正大学教授が解説する。

2019年の統一地方選の中で注目を集めている選挙の一つが、大阪のいわゆるダブル選挙・クロス選挙だ。このエッセイでは、住民の“代表”としての首長という切り口から、政治哲学・政治理論分野での代表論研究を手掛かりに、この選挙の一つの側面を考えてみたい。

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都構想とクロス選という二つの論点

大阪の選挙では、政策上の主要争点となっている都構想の是非と、府知事と市長が役割を交代する形で出馬するクロス選挙という手法の是非と、大きく分けて二つの論点があると思う。都構想の問題も後で取り上げることになるのだが、ここではまずクロス選挙から考えていくことにしたい。

新聞等を見てみると、このクロス選挙については、脱法的な行為であり、現在の制度の(暗黙の)ルールを逸脱するという批判が多く見られる。他方で、法律上禁止されているわけではなく、政党としてのまとまりをもって府市一貫した政策を遂行するための選択なのだからやむを得ない、という意見も少なくないようだ。

ただ、現職府知事が次期市長に、現職市長が次期府知事に立候補するというのは、確かに異例の事態ではある。このような制度の使い方をどのように考えればよいのだろうか。

 

代表としての首長の決断は何でも許されるか?

府知事、市長などの首長の地位は、国政における総理大臣の地位と似ているが、異なる一面もある。それは、知事や市長も議会議員と同じく住民から直接に選挙で選ばれた代表である、ということだ。

総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で選ばれるので、国民の手による選挙を経ていない。これに対して、自治体では議会と並んで首長も住民による選挙で選ばれる。

そのため、日本の地方自治制度は「二元代表制」と呼ばれ、首長は代表としての強力な正統性を身にまとう。今回の選挙も、知事や市長が住民の代表として決断したということになる。では、住民の代表として、クロス選挙のような決断は許されるのか。

代表の曖昧さと「制度」の意味

すでに選挙で信任を得ている以上、首長に住民の代表者として決断する権限が授けられているのは間違いない。ところが、代表に許される行動の範囲は、そうした権限だけで定まるほど単純ではない。

代表の役割は、一つには住民の意思や希望を実現することだ。住民の意思や希望を無視して勝手に行動しても良いのならば、何のために選挙をしているのかわからない。この場合、代表の行動は、厳格に制約される方が望ましいということになる。

しかし他方では、住民の意思から離れてでも独自の見解にこだわりクリエイティブな政治を実現する役割が代表者に期待されることもある。政治家に創意工夫や自立心やリーダーシップがなかったら、私たちはそのような人が自分たちの代表であることに失望するだろう。この場合、代表の行動は、可能な限り束縛されない方が良いということになる。