日本の子どもは、教育によって貧しくなっているという「強烈な皮肉」

OECDで最低クラスの教育予算の意味
竹信 三恵子 プロフィール

ブラックバイトを生む土壌

2000年以降のデフレ期、企業経営は非正社員を増やすなどして人件費削減で利益を出す方向へと向かった。最近では「アベノミクス」の成果で景気が良くなり働く人が増えたと言われる。

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だが、2018年度の労働力調査(速報)で見ると、年金の支給開始時の繰り上げに伴う再雇用と思われる65歳以上の層と、バイト学生の増加ぶりが目立つ。

学生バイトはいま、最低賃金水準で働く格好の低賃金労働力となっている。まず、働くルールをまともに教えられたことがない学生がほとんどで「バイトだからしかたない」と考えがちなため、従順な労働力の温床になる。

 

アルバイトはかつて、授業との両立が前提で、だからこそ低賃金の軽い仕事、という常識があった。そのため、「その程度で音を上げるなんてだらしない」と誤解されがちで、大人世代は味方になってくれにくい。

ところがいまは、店長以外はアルバイトだけという職場も多く、バイトはすでに基幹労働力だ。授業に合わせてシフトを選びたいと言うと採用されず、仕事の都合にいくらでも合わせるという学生が優先的に採用されることも少なくない。

学生の中には、ノルマの達成順位が高いバイトはシフトを選べるというシステムがあって、ノルマの達成度が低いため授業に出席できないという例もあった。

病気で休みたいというと「代わりを探せ」と言われて熱があるのに友人に電話をかけまくって頼んだり、長時間労働に疲れ果て「辞めたい」と言ったら「代わりがいない」と泣きつかれたり脅されたりして辞められず、体調を崩した学生もいる。

ここに、辞めたら学費や生活費をまかなえないという条件が重なって、ますます辞められない。中京大の大内裕和教授が名付けた「ブラックバイト」が、こうして生まれる。

なんとか卒業、就職にこぎつけても、15~24歳の3人に1人が非正規(2018年労働力調査)、正社員となっても6割以上が年間給与500万円以下だ(2017年民間給与実態統計調査)。

こうした現状が奨学金返済に行き詰まる若者を増やしている。さらに、財政難を理由に公立学校では非正規教員が増やされ、教員の1割近く(2016年文科省調査)に達し、もう一つの貧困を生み出す。「教えるワーキングプア」だ。

このような教育のシステムの総体が、人々を貧困へと誘導していると言いたくなる現状に批判が高まり、ようやく2017年度から返済がいらない公的給付型奨学金がスタートした。

だが、対象は、本格実施された2018年度以降でも非課税世帯を中心とした年2万人程度で、「課税最低限よりやや上から中低度までの世帯」には恩恵が及ばない。