「20代の4割が童貞」というトイアンナさんの記事によると、告白するだけでLINEやTwitterで晒され、怖くて恋愛ができない男性が多いのだという。そもそも、「告白する」という行為がないと「恋人」はできないのだろうか。22歳でドイツに移住したライターの雨宮紫苑さんが、ドイツの恋愛事情から「付き合うとはなにか」を考える。

仲良しのドイツ人男性から言われたこと

「俺らって友だち?」

彼にこう聞かれたのは、2013年の5月下旬、汗ばむ五月晴れの日だった。

ドイツに留学中、わたしはとあるドイツ人男性と仲良くなり、毎日のように会っていた。彼といるのは心地いいけれど、季節はすでに初夏。あと2ヵ月で留学期間が終わることを考えると、いまさら関係を変えようとは思わなかった。

しかしいつもどおり彼とカフェで雑談した帰り道、ぽつりと聞かれたのだ。「俺らって友だち?」と。

わたしは頭の中にクエスチョンマークを浮かべながら、おずおずと「わたしが友だちって思ってただけでただの知り合いってこと……?」と聞いてみた。しかし彼はちょっと間をおいて、「ごめん気にしないで」と言うだけ。いやいや、気になりますけども。

いったいなんだったんだ?とモヤモヤしていたが、翌日、彼から「付き合いたい」と改めて言われた。昨日のアレはどうやら、「俺たちって付き合ってる?」という確認だったらしい。

わたしと彼の恋愛は、こんな感じでなんとも締まらない雰囲気のなかはじまった。

線引きは態度ではっきり示す

ドイツでは、日本のような「お付き合いの合意」を意味する告白はあまりメジャーではない。仲良くなって、物理的・精神的距離感が近くなって、気づいたら恋人関係……というほうが主流だ。

わたしは「白か黒か」というタイプなので、ドイツの「なんとなく付き合いがはじまる」という煮え切らない感じは、どうにもしっくりこない。ドイツ人は思っていることを言葉で主張する人が多いのに、なんでここだけ曖昧なんだろう。

そう考えてみて、「ドイツ人は人との距離感を結構きっちりと線引きするから告白がいらないのかもしれないなぁ」なんて思った。

ドイツ語には敬語(より正確に言えば丁寧語)が存在する。二人称のyouにあたる単語が、「Sie(あなた)」と「du(君)」の2パターンあるのだ。ただしこれは、立場によってというよりは、その人との距離感によって使い分ける

ご近所さんとは最初「Sie」で会話しはじめ、何回か立ち話する関係になり、「じゃあduと呼びあいましょう」と合意してから「du」に変更。上司と部下がたがいに「Sie」を使うこともあれば、お互い「du」と気軽に呼ぶこともある。

挨拶が握手なのかハグなのかも線引きのひとつで、外国人のわたしは毎回(どっちが正解だ!?)とドキドキする。

「挨拶代わりのハグ」も親しさによっては「握手」だとすると、日本生まれの日本育ちの人はドキドキすることが多いはず Photo by iStock

「愛している」を意味する「Ich liebe dich」はかなり重い言葉なので、付き合いが浅いときに言えば相手はびっくりするだろう。最初は「Ich hab dich lieb」(友だち間でも使える「好き」)くらいでいい。

「ドイツ人は堅苦しくて仲良くなりづらい」なんて話をよく聞くが、こうやってきっちりと線引きするから、「パーソナルスペースに入れてくれる=恋人」という認識になり、あえて付き合う合意を得る必要がないのかもしれない。