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中国共産党「必読文献」を読んでわかった「日本は中国の眼中にナシ」

橋爪大三郎の「社会学の窓から」⑪

山積みの「共産党指定文献」

『習近平新時代中国特色社会主義思想三十講』(2018年6月、中共中央宣伝部編著、学習出版社)という本を買ってきた。中国語の書店ならどこでも山積みになっている。中国共産党では党員は、指定の文献を学習しなければならない。この文献は当然指定されて、いま中国中で読まれているわけだ。

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ちなみに、この書名は長いけれども、短縮すると「習近平思想」になる。毛沢東思想を意識した、野心的なタイトルだ。

党員にはランク(級別)があって、上級の党員にだけ配られる内部の参考資料があるなど、アクセスできる情報に違いがある。書店で山積みになっているのは、一般の党員向けの文書だ。

宣伝部は、党の内外に、党の思想や基本政策を普及させる部署。文化大革命のときには大きな権限をふるった。中央宣伝部は、党中央の重要な政策文書を編集する。用語の選択や言葉づかいには厳格な決まりがあり、間違えることはできない。

中国の公式文書の用語は、大部分、日本語と共通している。「共産党」「幹部」「社会主義」「政治」など、あげればきりがない。おかげで日本人は、中国の文書を翻訳せずにそのまま読むことができる。

わが国の先人が欧米の基本語彙を、残らず漢字に置き換えておいてくれたおかげだ。中国(清朝)ではそうした活動が自由にできなかったので、日本の語彙を輸入したのだ。

 

中国からみた日本

第二十六講「構建人類命運共同体」(人類の運命共同体を築こう)では、中国の基本的な国際戦略をまとめている。

人類生活在同一個地球村里(人類はひとつの地球村に生きている)、始終不渝走和平発展道路(変わることなく平和な発展の道を進もう)、建設持久和平、普遍安全、共同繁栄、開放包容、清潔美麗的世界(平和が続き、どこでも安全で、共に繁栄し、開放的で寛容で、清潔で美しい世界を建設しよう)、と各節でよさそうなことをいろいろのべる。

「走和平発展道路」の節の末尾に、注意すべきことが書かれている。

走和平発展道路…是有底線的(平和な発展の道を歩む…にも、譲れぬ一線がある)。這就是堅決維護国家核心利益(すなわち、国家の核心となる利益は固く守ることだ)。

決不能放棄我們的正当権益(われわれの正当な権益を放棄することは決してできない)。中国主権、安全、発展利益和民族尊厳絶不允許任何勢力侵犯(中国の主権、安全、発展の利益、民族の尊厳は、どんな勢力といえども絶対に侵犯を許すことはできない)。

平和に経済協力をすると言っても、条件つきなのだ。当たり前だが、衣の下に鎧が隠れている。

そのあとの節、積極発展全球伙伴関係(グローバルな仲間関係を積極的に発展させよう)にも、中国の本音が表れている。

大事な国の順番にまず、注目すべきだろう。

最初は、1)ロシア。最主要、最重要的戦略協作伙伴(いちばん主要で重要な戦略的パートナー)。

つぎは、2)アメリカ。当前中美関係…己経変成“你中有我、我中有你”的利益共同体(現在の中米関係はもう、「あなたあっての私、私あってのあなた」の利益共同体になっている)。

そして3)欧州。多極化世界的重要一極(多極化した世界の重要な一極)だ。

そのつぎは周辺諸国。中国始終将周辺置于外交全局的首要位置(中国は一貫して周辺諸国を外交全体のなかの大事な場所に置いてきた)。

4)朝鮮半島。非核化を対話で解決する。5)日本。厳格遵循中日四個政治文書精神和四点原則共識、確保両国関係沿着正確方向発展(四つの政治文書や原則の共通認識を厳格に守り、両国関係を正確な方向に発展させる)。四つの政治文書とは、1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同宣言、を指す。以下、6)東南アジア。7)南アジア。8)中央アジア、と続く。

そのつぎ、発展途上国は、我国走和平発展道路的同路人(中国が平和的発展の道を進む同行者)だとする。9)アフリカ。10)ラテン・アメリカ、カリブ海諸国。11)アラブ諸国。この順に、あるべき関係を論じている。