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中東の航空会社におされる「航空アライアンス」のこれから

未来の空旅はどう変わるか・その5
戸崎 肇 プロフィール

しかし、事態は違った方向に推移していく。中国、アフリカなど、新興市場が成長していく中で、それらの市場を取り込んでいくためには、先にも見たように、地元の航空会社を仲間に引き入れていくことが有利になる。

そこで、各アライアンスは、新興市場の航空会社の勧誘合戦を繰り広げることになる。その結果、アライアンスの加盟会社の数は予想を上回る増加を示した。そして、最近はLCCにまでその門戸は開かれている。

 

また、アライアンスの中でも一種の「格差」が存在していた。どのアライアンスも、その中心には欧米の大手航空会社がおり、リーダーシップを発揮していた。それにアジアの大手などがそれに従うような構造であった。

したがって、アライアンスの意向といっても、それが平等な意見集約のもので形成されたものとは言い難く、それもあって、先述の燃料などの共同購入などはメンバー間での歩調が合わず、ほとんど実施されてこなかった。

逆に、アライアンスとしての制約をいやがるところも出てくる

経営戦略の転換などで、アライアンス内のメンバーよりも他のアライアンスのメンバーと組んだほうがより望ましいと考える航空会社は、実際にアライアンスの壁を超えて2社間の提携を結ぶようになってきたのである。

中東の航空会社の強み

こうした中、石油産出国である中東諸国から勢いのある航空会社が世界市場でプレゼンスを高めてきた。アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空、同じくアラブ首長国連邦のアブダビ首長国に本拠を置くエティハド航空、そしてカタールのカタール航空である。

日本にも飛来するエミレーツ航空のA380(photo by gettyimages)

いずれも高品質のサービスを提供することから、利用者の間で高い評価を得ている。そして、カタール航空はワン・ワールドに属しているが、他の2社はどのアライアンスにも属していないことに注目すべきである。

先にも触れたように、アライアンスに属すると、パートナー選択の際などにある一定の制約がかかってくる。それだったら、どこにも属さず、必要に応じて個別的に他の航空会社と提携を結んだほうがよいと考えたのだ。

そして、大量の航空機を購入し、路線ネットワークを主に単独で拡大していった。

こうした動きを脅威に感じたアライアンス所属組の大手FSCは、中東諸国の航空会社は、国家の石油資本をもととする補助金を不当に多く受け取っており、だからこそそのような大規模な投資ができるのだ、それは不当競争にあたるとして非難した。

これに対して、中東側は当然ながらそのような事実はないとして反論している。ただ、運航コストの大きな部分を占める燃油を安く仕入れられることが大きなアドバンテージの1つになっていることは推察される。

中東諸国の航空会社の強みは、その本拠地が地理的に見て、欧州とアジアをはじめとして、世界中の地域と地域を結ぶ乗り継ぎ地点として有利な場所にあることだ。

そのため、エミレーツ航空などは、世界の乗り継ぎ旅客を取り込んでいくうえで、他の地域の航空会社よりも優位に立つことができる。この点については、空港の生き残り戦略について論じる際に再度取り上げる。

このように、アライアンスを中心としたFSCの戦略は大きな転換期を迎えている。あまりにもメンバーを拡大しすぎたため、十分な統制がとれなくなったこと、市場の変化の速さに対して、固定的な体制による対応が困難になってきたこと、また、LCCとの戦略の差別化ができなくなっていることなどの理由である。

今後は、アライアンス以前のように、個別の航空会社間の連携が柔軟に展開されていくのではないかと考える。その点、利用者にとっては航空市場全体の構造がわかりにくくなっていくのではないだろうか。

しかし、それだけ市場の要望に対して航空会社側でより的確に対応してくれるのなら、その方が望ましいといえよう。アライアンスは、ありようによっては一種の寡占形態をもたらしかねないからだ。