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中東の航空会社におされる「航空アライアンス」のこれから

未来の空旅はどう変わるか・その5
戸崎 肇 プロフィール

海外に自社で拠点を設けようと直接投資しようとしても、こうしたイベントリスクもあるし、グローバル化がすでに相当してきた結果、新たな市場を開拓しようとする場合、これまでの経験・ノウハウが通じない市場に出ていく場合が多くなる。

イスラム諸国や社会主義的な国家の場合を考えてみよう。

前者においては宗教的理解が非常に重要となる。たとえば、インバウンド政策を推進する中で「ハラール」については日本でもかなり理解されるようにはなっているが、イスラム教の教義に通じている人に言わせれば、まだまだ対応が甘いそうだ。

ハラール食品への意識は甘い(photo by gettyimages)

また、後者の場合、個人的な関係、つまり「コネ」がビジネスを進めていくための鍵となり、その関係を構築するためには往々にして長い時間がかかる。迅速さが求められるビジネス展開での致命傷になりかねない。

このような状況においては、その市場ですでに成功を収めている企業と提携を結んで、お互いに長所を出し合って競争力を高めたほうが、より迅速に、そしてリスクを押さえてネットワークの拡大を図ることができる。

 

また、アライアンスが構築される他の理由として、航空機や燃料などをアライアンスとして一括して購入すれば、売り手に対する交渉力が増し、大きなスケールメリットを得るという考えもあった。

もちろん、アライアンスを進めるにあたっては、各種の課題もある。まずは、アライアンスのメンバー間での情報共有を進める必要がある。意見調整に時間がかかると、迅速な戦略展開を行うことができない。

いわゆる「交渉コスト」を最小化する必要があるのだ。この目的においてはインターネットなどの情報化の進展が大きく寄与するが、同時にそれは各社の固有の事情が他社にさらされるリスクも負うことになってしまう。

予約システムなどを共有化すれば、全体としての効率化にはつながるが、何らかの理由によってそのアライアンスから離脱しようとする場合には、そのシステムを改修する必要が生じ、膨大な転換コストがかかってくることになる。

また、アライアンス全体のブランドをどのように構築し、高めていくかという問題もある。もしメンバーのどれかの航空会社が評判の悪いサービスを提供していたり、また万が一事故を起こしたりすれば、その影響は当該航空会社だけではなく、アライアンス全体に及ぶことになりかねない。

アライアンスはLCCも取り入れる

そうしたリスクを極力抑えるために、設立当初からしばらくの間、アライアンスのメンバーの選定は慎重に行われていた。

主要な航空会社がスターアライアンス、ワン・ワールド、スカイチームのどれかに所属するようになると、それに新たに加盟しようとする航空会社は、まずはオブザーバーとして加わり、そこから正会員となっていくという手続きがとられていた。

こうしてアライアンスは「優等生クラブ」のような観を呈した。そして、アライアンスに加盟した航空会社とその他の航空会社の間に格差が生じ、それが拡大していくのではないかという予想もなされた。