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こんなにもたいへんな、天皇「国事行為」の中身

大人の身長を超える厚さの書類……
テレビなどで流れる、天皇が勲章を直接手渡す「親授式」。この「栄典の授与」という国事行為だけでも、多くの時間がかかっているのをご存じだろうか。大人の身長を超えるくらいの厚さの書類に目を通すなど、知られざる「日常」を、『天皇陛下の全仕事』の著者が明らかにする。

「栄典の授与」は単なる儀式ではない

「春・秋の叙勲シーズンになると毎回、大人の身長を超えるくらいの厚さの書類に(平成の)陛下は目を通されているんですよ。すべてにですよ。うそじゃないですよ」と関係者は言った。 

国事行為の一つに「栄典の授与」(わかりやすくいえば「叙勲」など)というのがある。叙勲というと、皇居で大綬章(旧・勲一等)や文化勲章の受章者に天皇が勲章を手渡す儀式の場面を思い浮かべる人が多いかもしれないが、じつはそれは「栄典の授与」の国事行為のうちのほんの一部分にすぎない。

春・秋の叙勲は各4000人の受章者がいるが、その時期になると、天皇のもとに、内閣総理大臣名で「〇〇〇〇外(ほか)〇名 叙勲について 右謹んで裁可(許可)を仰ぎます」という書類が届く。

最初の4つの〇は最上位の一人の受章者の名前、「〇名」は残りの人数(例えば「四千八十五名」など)が書かれている。天皇はその書類に「可」と刻まれた印(縦横2・5センチ)を押す。これにより4000人への授与が裁可され、つづいて、勲章とともに受章者へ渡される勲記(賞状)が作成される。

勲記には国の公印であり縦横各9センチもある「国璽(こくじ)」が宮内庁職員によって押印され、上位の受章者の勲記には天皇の毛筆の署名も入る。これが何十枚もあり、天皇はその署名作業も行う。

そして、映像や写真などで見たことがあると思うが、上位の受章者には皇居・宮殿で天皇が勲章を直接手渡す「親授式」が行われる。授与への裁可から実際の勲章手渡しまでの一連の流れが「栄典の授与」という国事行為になる。

1週間にわたってつづく「拝謁」

ただ、憲法では、栄典の「授与」(特に手渡しの部分)について、上位の受章者だけ、などという限定はつけていないから、本来は4000人全員に対して天皇から手渡す、ということになるのだろうが、さすがにそれは無理だ。

そこで、上位でない勲章については所管官庁ごとに大臣から手渡すような形(例えば、文部科学省関係の分野の受章者は国立劇場で文部科学大臣から)にし、その代わりとして「拝謁(はいえつ)」といって、受章者夫妻が皇居に招かれ、まとまって天皇に面会し、ねぎらいのお言葉を受ける。受章者だけでなく配偶者も招かれるので人数は倍、この人数に対応するため、1回の拝謁に1000人前後、それが1日2回で1週間にわたってつづけられる。

これも国事行為に密接に関連するものととらえれば、「栄典の授与」という国事行為が単なる短時間の勲章手渡しの儀式のようなものとはまったく違うことがわかるだろう。

叙勲シーズンは書類決裁だけで1日6時間も

注意すべきは、天皇に届く書類の内容だ。勲章授与の裁可を求める書類のほかに、冒頭でふれたが、全受章者の受章理由が書かれた「功績調書」が添付される。それが4000人分で「大人の身長を超えるくらい」の厚さになる。