〔PHOTO〕立木義浩
# AD special

漫画家・村上もとかさんがいまさら『六三四の剣』を語るワケ

タリスカー・ゴールデンアワー24回(前編)

提供:MHD

ある日、なにを思ったか、相棒のボブが真剣な顔つきでわたしに聞いてきた。

「シマジさんの幅広い人脈は漫画家さんにも及びますか?」

どうして漫画家に興味があるのかと聞き返すと、こう懇願するではないか。

「日本人でいちばん会いたい方は漫画家の村上もとか先生なんです。シマジさん、お願いします。なんでも言うことを聞きますから村上先生に会わせてください!」

たしかにわたしはずっと集英社に勤めていたが、実際のところ漫画の世界には詳しくないし、人脈も持っていない。だが、唯一、作品を読んでいて、また親しい漫画家は、村上もとかさんその人なのである。

「村上さんならいつでもここに呼んであげるよ。しかし、どうしてまた村上さんに会いたいんだ」

「よくぞ訊いてくれました。わたしはアメリカにいるときから剣道をやっていました。そして高校3年生のとき、日本に留学生としてやってきて、生まれてはじめて読んだ日本の漫画が村上先生の『六三四の剣』だったんです。是非、村上先生をお呼びしましょうよ。シマジさんお願いします!」

というわけで、いま、ボブとわたしの目の前には村上もとかさんが座っている。

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

* * *

シマジ: 村上さん、今日は村上さんの熱狂的なアメリカ人のファンをまず紹介いたしましょう。わたしの相棒のボブです。

ボブ: はじめまして、ボブと申します。MHDでシングルモルトウイスキーのアンバサダーをやっています。ぼくは本当に村上先生にお会いしたかったんです。だから今日はとても緊張しています。

村上: はじめまして。アメリカ出身のボブさんのような方が、私の作品を読んで気に入ってくださっているのは、とてもうれしいです。どうもありがとうございます。

ボブ: ぼくが高校3年のとき留学生として日本にやってきまして、その時に『六三四の剣』という漫画があるよ、と紹介されたんです。読んでみると結構やさしい日本語でしかも口語だったし、日本語を勉強するのにちょうどよかった。しかもぼくが実際習っている剣道の物語ではないですか。

まだ日本にきて2,3ヵ月ぐらいで、その当時は埼玉県に住んでいたんですが、「まんず」が口癖になってしまって、「まんずまんず、よろしくお願いします」と言ったりしていました。みんなから「ボブくん、それは東北の言葉だけど」って言われました。

剣道に関しても、自分はずっと中段の構えだったんですが、六三四は上段の構えじゃないですか。それが格好よくて、剣道の先生に「六三四みたいに上段の構えが出来るようになりたいんです」ってお願いしたことがありました。それから十何年も剣道をやってきて、ずっとぼくは上段の構えで通しています。

シマジ: ボブ、そう興奮しなくてもいいんだよ。今日は時間はたっぷりあるからね。その前に早くスパイシーハイボールを作ってくれる。

ボブ: 私としたことが、これはこれは失礼いたしました。すぐにお作りします。

シマジ: それでは村上さん、タリスカースパイシーハイボールを召し上がりながら、じっくりお話を聞かせてください。

村上: シマジさんのバーでもお宅でも、今までに何度もいただいていますが、いつ飲んでもこのタリスカースパイシーハイボールは美味しいですね。ピートの香りがする黒胡椒がクセになります。

今日は早めに仕事を切り上げて急いで駆け付けましたから喉が渇いていますし、明るいうちから飲む罪悪感も相まって、なおさら美味しく感じます。

ボブ: 何杯でもお作りしますから、存分に召し上がってください。

村上: ありがとうございます。ボブさんは日本にくる前から剣道をなさっていたんですね。

ボブ: はい。日本にくる2年ぐらい前からやっておりました。

ヒノ: 地元に道場があったんですか?

ボブ: ニューヨーク州のオルバニーという田舎町なんですけど、日本人の先生がやっている道場があって、そこに通っていました。

ヒノ: ニューヨーク州ということは、位置的にはアメリカの東北ですね。

ボブ: そうなりますね。まんず、冬は寒っかったす。『六三四の剣』は村上先生が何歳のときの作品だったんですか。

村上: あれはちょうどぼくが29歳になったときにはじまりまして、小学館の「少年サンデー」で5年ぐらい連載しました。

もともとぼくが描くものは、わりと青年誌っぽいと言われていたんですね。その前は「少年ジャンプ」でカーレースものを描いていまして、ちょっと年齢が高めな感じだったものですから、一度、少年誌の王道的な成長ものを描いてみようと思ってチャレンジしたのが『六三四の剣』でした。サンデーコミックスの単行本は、全24巻ぐらいだったかな。

シマジ: わたしが今日のために読んだのはワイド版で全11巻でした。少年のころから高校卒業まで暮らした一関の地名が突然出てきたので懐かしくなりました。舞台は盛岡ですものね。

ボブ: お父さん同士もむかしからライバルだったという設定もいいですよね。

シマジ: そう、しかも片方はお母さんが死んで、もう片方はお父さんが死んでしまうという条件もいいですね。

ヒノ: 私も小学生のころ、アニメ版を夢中になって観ていましたし、ファミコンのソフトも持っていました。しかし、そもそも村上先生はどうして剣道を題材にしようと思われたんですか?

海が育んだシングルモルト スコッチウイスキー
タリスカー 10年(TALISKER 10 YEARS)

スカイ島が誇る、金色の蒸留酒。ピートと海潮の力強い香りとスモーキーな甘さを持ち合わせた、まさに男性的なモルトです。爆発的かつ複雑な香味の特徴が人々を惹きつけてやみません。