全日本人ゴルファー必読!「手首を返す」スイングは大間違いだった

世界トップ選手が実践する最新理論とは
ブルーバックス編集部 プロフィール

世界に取り残された“ジャパニーズゴルフ”の悲喜劇

──日本で主流となっているゴルフ理論は、じつは世界標準から見れば“異形”なものだった。

板橋「その通りです。日本ならではのスイング理論が生まれ、それが独自に発展していく過程で、いつのまにか世界の常識から大きく隔絶した状況が生まれていたわけですね。周知のとおり、ガラパゴス化とは、孤立した環境で独自の進化を遂げた技術や慣習を指します。つまり、日本のなかでガラパゴス化したスイング理論しか学んでいなかった私に、アカデミー側が教えることを禁じたのも無理はありませんでした」

──自分が学んできた理論がガラパゴス化の産物だったと、板橋さん自身が気づいたきっかけはなんだったんですか。

板橋「ヒルズ学園を代表する世界的コーチであるケン・バーントとイアン・トリックスに勧められたジョージ・ヌードソン著『ナチュラル・ゴルフ』を読んだことです。ヌードソンは、伝説のゴルファー・ベン・ホーガンの弟子としてただひとり認められた人物です。

『ナチュラル・ゴルフ』は、残念ながら日本語に訳されていなかったので、原著を入手し、辞書を片手に自分で訳しながら、赤ペンで真っ赤になるまで読み込みました。そこに書かれていたことは、私にとってすべてが新鮮で、衝撃的でしたね」

【写真】ジョージ・ヌードソン
  ジョージ・ヌードソン。彼の著書『ナチュラル・ゴルフ』を赤ペンで真っ赤になるまで読み込んだ photo by gettyimages

──具体的にどのようなことが書かれていたのでしょう?

板橋「たとえば、〈ふところをつくって右ひじを入れる〉、〈クラブをフリーにして遠心力で飛ばす〉、〈フィニッシュはインバランスで〉……等々、日本でゴルフをやっていたときには聞いたこともない内容や言葉ばかりが並んでいました。

同時に、ヒルズ学園でも、同僚のコーチが生徒たちにどうゴルフを教えているのか、じっくり観察しました。外部のコーチのレッスンを見て回ったり、実際に自分がレッスンを受けにいったこともあるんですよ(笑)」

──そうして徐々に、世界標準のスイングを身につけていった。

板橋「日々ゴルフを学び続けた私に、『ゴルフを教えてもいいぞ』と免許皆伝の許しが出たのは、渡豪からちょうど10年目のことでした」

「農耕型スイング」と「狩猟型スイング」の違い

──世界標準と日本的スイングの大きな違いは何でしょうか。

板橋「典型的な違いは、リストの使い方でしょう。

世界のゴルフ界にはいま、2つのスイングの潮流がありあす。1つは、〈手を返すスイング=リストターンスイング〉、もう1つは〈手を返さないスイング=ノーリストターンスイング〉です。

そして、日本人ゴルファーの99%以上が、〈手を返すスイング〉をしている。インパクトの前後で右手と左手の上下関係を入れ替えてクラブを加速させる──要するに、手元(グリップ)を止めて支点をつくり、腕を返すことでクラブヘッドのスピードを上げようという理屈です。

それに対し、ゴルフの最先端をいく欧米で主流になっているのは〈手を返さないスイング〉です。リストの動きを抑え、体幹を軸に身体全体を回転させることで、クラブヘッドの遠心力を最大化させてボールを運んでいく。欧米のトッププロはみな、そろってこのスイングで活躍していますし、インストラクターたちが一般のアマチュアゴルファーに教えているのも、この理論なのです。

──私もこれまで、いろいろなゴルフ理論書を読んできましたが、そのすべてが“リストターンを前提にした"スイング"を説いていました。まさにガラパゴス現象ですね。

板橋「じつは、リストターンする打ち方ではヘッドスピードが十分に出ず、飛距離は伸びないのです。そしてまっすぐ飛ばすことも難しい。

そのような打ち方が定着した背景には、もしかすると農耕民族と狩猟民族の違いがあったのかもしれません。わかりやすく言い換えれば〈身体をねじる習慣のない農耕民族=日本人〉と、〈身体をねじる習慣のある狩猟民族=欧米人〉の違いです。

農耕民族の動きは、鍬(くわ)などの農具を使うときに、両手で柄をもって頭上に掲げ、身体の正面に振り下ろして衝撃を発生させます。一方、狩猟民族の動きは獲物(ターゲット)に対して必ず半身に構えます。獲物から目を離すと、獲物に襲われる危険があるからです。

斧などの武器を手にして半身で構え、その状態から上半身をねじることでエネルギーをたくわえて、回転運動に変えていく。ゴルフスイングでも、これとまったく同じ動きをするわけです。

──農耕型の日本人は、“点”に向かって直線的に振り下ろしていく。それとは対照的に、狩猟型の欧米人は半身に構えて“流れ”の中でスイングする……。確かにまったく異なるスイングになりますね。

【写真】
  「農耕民族と狩猟民族の違いがあったのかもしれません」ーー身振りを交えながらの説明に熱が入る板橋さん

日本のゴルフ理論は、携帯電話やパソコンと同じようにガラパゴス化が進んでいる。農耕民族的スイングと狩猟民族的スイングの違い……。板橋さんから発せられる言葉は、これまで耳にしたことがない新鮮かつ説得力のあるものばかりだ。

それでは、世界標準のスイングとはいったいどのようなものなのか?

次回は、日本的スイングと世界標準スイングの違いを、「リストターン」や「トップ」など、具体的な身体動作に対する科学的分析から説明してもらう。

→第2回はこちらからどうぞ!

【書影】化学的ゴルフ上達法

世界標準のスイングが身につく科学的ゴルフ上達法

板橋 繁(ヒルズ学園ゴルフ部元監督)

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