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認知症になって、一度制限されたら「死ぬまで解除されないもの」一覧

認知症1300万人時代の覚悟と決断

死後の手続きは大変だ。だが、「その前」の話のほうも深刻かもしれない。日常のすべてが、いつの間にか制限されるのだから。カネもおろせないどころか手術も受けられない、その実態を明かす。

愕然とした窓口の対応

「死後に、銀行口座が凍結されるというのは知っていました。でも、私はこうして生きているんですよ。なぜ、私が自分の預金を使えなくなってしまったのか……」

こう憤るのは、都内在住の西口博子氏(72歳・仮名)だ。認知症予備軍である「軽度認知障害」(MCI)の症状が見られ、ときおり物忘れが出る。

だが程度は比較的軽く、誰の助けもなく、日常生活を送っている。本誌の取材に対しても、問題なく会話できている。

 

ところが昨年の秋、自宅近くの銀行支店で、突然、西口氏の預金口座の入出金が「凍結」された。

「通帳を紛失してしまったので、再発行をお願いしたんです。すると、窓口の人が上司としばらく話したあと、私にこう告げたのです。『ご家族の方に来ていただかないと、西口さんに通帳の再発行はできません』」(西口氏)

西口氏の通帳再発行は1年で3度目のことだった。前回は、簡単な認知症検査を別室で実施されている。たび重なる通帳紛失に対し、銀行は西口氏の認知能力を疑った。

しかし、西口氏はすでに夫を亡くし、長男夫婦は九州在住で、とても出てこられる状況にない。そう告げると、銀行の職員は、長男に電話をかけて、こう言ったという。

「お母様は、成年後見制度を利用していただかないと、これ以上の取引は難しいですね」

成年後見?かつての禁治産・準禁治産制度ではないか。西口さんは愕然とした。

この種のトラブルが全国の銀行窓口で多発している。認知症の疑いをもたれた瞬間に、口座が使えなくなってしまうのだ。