オーディションに落ち続ける影響

オーディションに落ち続けることは、就職活動で失敗し続けることと同じです。むしろ、生まれ持った容姿も否定されるわけですから、より一層自信を喪失するともいえるかもしれません。

オーディションではブックという履歴書のような自分のこれまでの作品集のアルバムを見てもらうことが通常なのですが、それさえ見てもらえず目も合わされずに数秒で帰らされることもあります。いくら表現力やウォーキング技術を訓練しても、見て貰うことさえできないことが続くと、やはりモデルとしての自分の存在価値を疑ってしまいます。

ティーンエイジャーで自分が何者なのかまだまだ探っている最中の柔らかな心には、人間性や努力の姿勢ではなく、ただ「見た目」と「存在感」のみでジャッジされる環境で否定され続けることは、さらにストレスフルであると言えます。

はじめは自信に満ち溢れていたモデルであっても、周りと比較され、成果が出せないことが続くと当然自身を失っていきます。

実は、特にモデルの業界には、家庭環境が複雑な子が少なくありません。家族からの愛情や、受けてきた自己肯定感につながる経験が少ない場合、このような否定的な体験を繰り返すことで自己肯定感はますます失われていきます。中にはひたすら恋愛に依存したり、摂食障害になったりする子も少なくありません。さらに薬物に手を出してしまった子も実際にいました。

長く第一線でモデルをしてきている友人たちに聞いてみたところ、高校を卒業するまでは実家暮らしであったり、早くに上京をした場合でも家族のサポートが厚かったり、両親が厳しく門限があり学業を絶対に優先させていた、などなど、「家族」という心の拠り所があったそうです。

オーディションに受からずに落ち込むことがあっても、「自分の存在を必ず肯定してくれる家族」がいることで、健全に悔しがり立ち直り、折れない心を作ってこられたと言います。

大学生のときの就職活動だって、かなりつらい思いをする人の方が多い。いわんや中高生で、一目で終わってしまうとなると…Photo by iStock

自己肯定感はどの人にとっても必要なものですが、なぜモデルにとってより大切かというと、それが自信になって姿形佇まいに表れてくるのです。

広告や誌面やショーなどで見て、自信なさげにおどおどしているモデルが身につけているものが魅力的に映るわけがありません。ハッタリでもいいので「王女様の私が認める世界一のものなのです」というオーラが必要なのです。

世界で活躍し続けている冨永愛さんでさえ、毎回海外に行く飛行機の中では、今回はどれほど仕事をさせてもらえるのだろうかと不安になっていたと言います。それでも、自己に打ち勝ち、絶対に負けないという闘争心を糧に自身を励ましてきたそうです。

日本を代表するスーパーモデルだと評価されていても、海外での悔しい経験がいくつもあったことで自身を見誤ることなく邁進できたのでしょう。ショーのウォーキングでも撮影でも、徹底的に練習をし、デザイナーが作る衣装に敬意を払い、その衣装に魂を込め最高の表現をするために自らの生き方をも律しているのです。

ちなみに冨永さんも高校卒業までは学業最優先でご実家から通いで海外との往復生活だったそうです。冨永さんのようなモデルは日本では数十年に一人と言われていますが、ここまでいかなくとも、ある程度モデルとして活躍するためにも、やはり心の健全さと自分への厳しさというものは必要であると言えるでしょう。

もしも娘が心からモデルになりたいと希望した場合、私は反対しません。目標に向かい努力していく過程で自己を見つめ直し、洗練もされ、大きく成長できるであろうと思っています。

ただし、これだけは何度でも伝えてあげたいと思っています。

何があってもあなたは私の大切な娘であり、世の中からの人気とあなたの価値は何も関係がないあなたが一生懸命に生きている事に価値があるのだ、と。