王貞治さんは「王シフト」をどう考えていたか。本人に聞いてみたら…

シフトはスラッガー冥利に尽きる
二宮 清純 プロフィール

「王シフト」について、王さんに聞いてみたら…

巨人内野陣のキーマンだった白石さんは王貞治さんの打球方向を徹底的に調べあげ、8割以上がセンターから右に飛ぶことを突き止めました。それを受け、ファーストをライン際に、セカンドは一、二塁間の一塁側に寄せました。ショートは通常、セカンドが守る位置です。サードには広くなった三遊間をひとりで担当させました。

そればかりではありません。外野手にも右寄りのポジショニングを指示しました。ライトはライン際、センターは右中間、レフトが左中間。打球が左中間から左方向に飛べば、もうお手上げです。それだけのリスクを負いながらも、こうしたシフトを敷かなければならなかったわけですから、王さんの強打ぶりがあらためて偲ばれます。

 

王さんに直に「王シフト」について聞いたことがあります。王さんは「忘れられないのは7月15日、大石清が先発した時のことです」と前置きして、こう続けました。

「大石は1960年から3年連続で20勝以上をあげているカープのエース。この試合も好調で、僕が2打席目に立つまで、ひとりのランナーも許していませんでした。

それで、何とか出塁しようと思って、とっさの判断で、ポンと三塁側にバントをした。王シフトでサードはショート側に守っているためガラ空きの状態です。ボールはレフト方向へ転がっていき、結局、二塁打に。大石は同い年だったんですけど、あれだけは本当に悪いことをしたと思っています(笑)」

しかし、これは特例で、「ホームランにシフトは関係ない」とシフトなど意に介さず、打席に立ち続けた王さんだからこそ、通算868本のアンタッチャブルレコードを樹立できたのでしょう。

シフトを敷かれるのは、スラッガー冥利に尽きる――。吉田選手には、こう考えてもらいたいものです。今季はキャリアハイの成績が期待できそうです。