翼竜にあらず! 前代未聞の「空飛び恐竜」その名前はわずか1文字!

恐竜大陸をゆく「奇翼龍」編!
安田 峰俊 プロフィール

あり得たかもしれない恐竜のもうひとつの進化

ちなみにイは、「イ(Yi)」が属名で、種名は「キ(Qi)」という変わった学名だが、これは過去の本連載記事第3回「恐竜の名前に「グ」が付くのは不正確だが残したほうがカッコいい問題」でも紹介した、中国語のアルファベット発音表記であるピンインを直接使うタイプの命名法である。

同様の命名がなされた中国恐竜は、遼寧省北票市の白亜紀前期の地層から出土した小型獣脚類のメイ(Mei long:寐龍)をはじめ、ときに名前がやたらに短くなることがある。

メイメイの復元図 Illustration by Emily Willoughby / Stocktrek Images

なかでもイ(Yi)の場合、アルファベットでわずか2文字なので、現時点では恐竜の属名のなかで最も短い名前だ。

イが属するスカンソリオプテリクス科はまだまだ研究が進んでいない種類だが、大きな分類のもとではコエルロサウルスの仲間(Coelurosauria)である。

つまり、始祖鳥などの鳥類にかなり近い生き物ということだ。

始祖鳥コエルロサウルス類に属する始祖鳥の復元図 Illustration by Stocktrek Images

コエルロサウルスの仲間は進化の過程で羽毛と翼を獲得し、空を飛べる鳥類になったことで生息域を広げ、結果的に白亜期末の大量絶滅を生き残ってその後の繁栄を築いた。

だが、イの存在は、彼らの仲間がもしかすると別の形で空に進出していたかもしれない可能性を示している。

イは結果的には進化の袋小路に入って消えてしまった生き物なのだが、恐竜が持っていた多様性をしみじみ感じさせてくれるユニークな存在なのである。

〈参考文献〉
A bizarre Jurassic maniraptoran theropod with preserved evidence of membranous wings(2015年5月7日「Nature」)
How Chinese fossils are rewriting the history of feathered dinosaurs(2017年5月29日「COSMOS」)
Bat-Winged Dinosaur Discovery Poses Flight Puzzle(2015年4月29日「Nature」)
小恐龍“打亂”鳥類縯化史(2016年2月22日「中国教育報」)
徐星:“奇翼龍”奇縁(2015年8月17日「中国科学報」)

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