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ロボットに「感情」を生じさせる方法…小説家が考える「4つの条件」

「笑うロボット」はこうして可能になる
「ロボット三原則」をインストールされたはずのロボットが殺人を犯した。なぜ──。
最新作で果敢に「ロボットの存在論」に挑んだ横溝正史賞作家・河合莞爾氏の特別書き下ろしエッセイ。「笑うロボット」はいかにして可能になるのか?

ロボットの魅力は「感情を持たない悲しさ」

思わず相崎は聞いた。
「お前、怖くないのか? 分解されて、溶解されることが」
ジャンヌは首を横に振った。
「前にも言いましたが、私を擬人化してはいけません。私には感情がありませんので、恐怖を感じることもありません」

(河合莞爾『ジャンヌ Jeanne, the Bystander』より)

「この小説は、人間が書けていない」──。小説を批判する時、あるいは文学賞に落選させる時によく使われる言葉だ。

私もいつか書評でこんなことを書かれるのではないかとヒヤヒヤしているクチだが、先頃刊行した最新作『ジャンヌ Jeanne, the Bystander』(祥伝社)は、この指摘を受ける恐れはないから安心だ。何しろ主人公は人間ではなく、ロボットなのだから。もっとも、「ロボットが書けていない」と批判される可能性はあるが──。

私にとって、ロボットの魅力は「感情を持たない悲しさ」だ。

ロボットPhoto by Matthew Henry from Burst

私のロボット原体験はご多分に漏れず『鉄腕アトム』(手塚治虫)だが、実は『ミサイルマン・マミー』(久米みのる・一峰大二)というロボット漫画のほうが好きだった。

アトムには感情がないことになっているが、義憤に怒ったり泣いたりするし、饒舌で自己主張もする。対してマミーは、感情もなく武器もなくほとんど喋らない。人間に命令されるまま黙って敵と戦うマミーをカッコいいと思う、そんな偏屈な子供だった。

一方で、人間には「感情」がある。人間ならずとも、ある程度進化した生物は「感情」を持っている。植物や微生物はよくわからないが、鳥類や爬虫類は持っているように見えるし、昆虫類も魚類も持っている気がする。少なくとも哺乳類は確実に持っている。

そして、進化した動物が「感情」を持っているということは、「感情」を持つことが「生存に有利だった」ということだ。

もうすぐ、知能を持ったロボットが現実の社会に登場する。もしかするとそのロボットは、我々人類が絶滅したあとも存在し続けるのではないか。

私はそのことを嬉しく思う。人類がいたという思い出を守りながら、この地球のリーダーとして全生物に慕われるようになってほしい。そのためには、ロボットも生態系の一部になることが必要になるかもしれない。

そして、ロボットが生態系の一員となるためには、もしかするとロボットにも「感情」が必要なのかもしれない。

私はただの物書きであって、ロボット工学者でも脳科学者でもない。だからロボットと感情について、何かの専門的な知見があろうはずもない。ただ、物書きとは妄想するのが商売であるから、あらゆる分野の未来について妄想してみたくなるのだ。

という訳で、人類が滅んだあともロボットが地球上に存在できるように、「ロボットに感情を生じさせる方法」を考えてみた。

なぜ、生物には「感情」が生じたのか?

「生物には、意思や感情なんて、無いのよ」
はっきりと、マリアは言い切った。

(河合莞爾『800年後に会いにいく』より)

そもそも、生物にはなぜ「感情」が生じたのだろうか?

ベンジャミン・リベット(1916~2007)というアメリカの神経生理学者は、多くの一般被験者を使った実験によって、以下の二つを証明したという。