たとえばADHDなどの子どもに対する、親の接し方を指導する「ペアレント・トレーニング」というプログラムは、この原理を応用したものです。
親から見て、子どもの行動を、「望ましい増やしたい行動」「望ましくはないが、許容できる行動」「望ましくなく、すぐに止めなければならない行動」に3つに分けます。
その上で、親の方が一貫して「望ましい行動」をほめ、「望ましくないが、許容できる行動」を無視することを続ける中で、子どもたちの行動に変化が起きることが示されました。
ポイントは、「行動」をほめたり無視することであって、「人」をほめたり無視することは控えられます。

しかし親御さんの中には、このような説明を聞いても納得できず、「うちの子どもにはほめられるような良いところなんてない。悪いことばかりしているので、いつも叱っています」と反論される方が、一定の割合でおられます。
たしかに、「望ましくなく、すぐに止めなければならない行動」については、その場で介入してそれや辞めさせる必要があります。
しかし、この行動に当たるものを広く拾い上げると、どのようなことが起きるでしょうか。
私はよく次のような説明をそのような親御さんに行うのですが、きちんと理解していただくと、自分たちの行動が子ども達の問題行動を増やしていたことに気付き、ショックを受ける方もおられます。
子どもからみて、「悪いことをすると、親が本気で注意する。注目される」ことになりますから、このような行動は増えていきます。
そしてこのような親御さんの多くが、子どもの問題行動に辟易としているので、子どもが問題行動を控えておとなしくしていると、油断して放っておいてしまいます。
そうすると、「静かに問題を起こさずに黙々と義務を果たしていると、親に無視される」ことになりますから、そのような行動が減ってしまうのです。
ですから、この悪循環から抜け出るために、子どもが少しでも望ましい行動を示した時に、積極的にそれに着目してほめる介入を続けることが、大変重要になってくるのです。