世界一働いているのに、世界一貧困率が高い

「貧困」というと、「親が仕事をしていない」というイメージを持つ方も多いのですが、ほとんどの保護者は仕事をしています。日本のひとり親家庭の就労率は8割を超えており世界一です。世界一働いているのに、世界一貧困率が高いという究極のワーキングプアが日本の母子家庭なのです。

日本では女性が子どもを産むときに一度仕事を辞め、その後はパートなどの非正規雇用に就くことが長らく続いたために、離婚などで世帯主になっても女性であるとなかなか正社員になれません。母子家庭でも57%は非正規雇用です。「病気で休めば来月の収入が減ってしまう」というような不安定な就労で、子どもを育てなければならないのです。ひとり親家庭で収入が少ない家庭には、児童扶養手当なども支給されますが、収入制限があるために、支給を受けている方も決して生活が楽なわけではなりません。

ですから、低賃金の仕事をいくつも掛け持ちしている方が少なくありません。昼間にスーパーでパートをして、夕方、一度家に帰って子どもに急いでご飯を食べさせて、夜にコンビニや居酒屋に仕事に行ったり、夜遅くまで働いて、閉店間際のスーパーで見切り品の惣菜を買って子どもと夕食をとるというような生活です。子どもの話をじっくりと聞いたり、まして勉強を見てあげるような時間がありません

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貧困家庭の子どもに無料で勉強を教えているというと、「塾なんか行かなくても、親が家で勉強を教えればいい」という方がいらっしゃいますが、子どもに向き合って勉強を教える時間がないのです。

さらに、家の狭さがあります。限られた家賃で借りられる家は狭く、子ども部屋がないばかりか、勉強机がない家庭も少なくありません。家で机と言えるのは、食卓テーブルしかなく、狭い部屋で他の家族がテレビを見ている場所で、宿題や試験勉強をするのは困難です。私たちの学習会に通う子どもには、家ではお盆の上で勉強しているという高校生や、家では自分の膝の上しかノートを広げる場所がないという中学生がいました。

教育格差は、本人たちの努力だけで埋めることは難しいのです。

子育てにあまり税金が使われていない

日本で子どもの貧困率がこんなに高いのは、税の再分配が子どもや子育てに少ないからです。日本では高齢者に手厚く税金が使われているのに対して、現役世代や子育て世代には、あまり税金が使われていません。

世帯類型別の所得再分配調査でも、高齢者の再分配係数が突出して高く、母子世帯やそれ以外の子育て世帯は、ほとんど再分配のメリットがありません。もう少し子育て世帯に税金を使って欲しいというと、「国も借金が膨らんでいるので難しい」と言われますが、再分配の比率をもう少しバランス良くすることは可能なはずです。

また、日本では教育にも税金を使っていません。資源がない日本では「人」こそが資源と言われており、また学力テストの世界比較でも常に上位を争う高い学力から、さぞ教育に税金を投じていると思っている方も多いと思います。

しかし日本は、先進国の中で最も教育に税金を投じていない国なのです。2018年発表のOECDの調査でも、教育機関への公的支出割合は加盟国中最下位でした。実は日本の教育は、親が私費で負担をすることで、高いレベルを維持していると推察できます。