男女平等に「怯える男たち」をケア…男性危機センターの大切な役割

スウェーデンの「男性政策」に学ぶ
伊藤 公雄 プロフィール

じっくりみていくと、女性の社会参画が進むことで、これまでの男性基準の社会が地殻変動を起こし始めていることが日本社会においても見えてくる。その結果、労働の仕組みや家族の多様化などをともなって発展してきたこの変化に、「ついていけない男性」たちが増加しつつあるように思われるのだ。

いわば「メンズ・クライシス(男性危機)」状況が静かに日本でも開始されていると思う。とはいえ、この「メンズ・クライシス」は、日本社会ではいまだ可視化されていない。

しかし、冷静にみれば「世代を超えた、男性による理由なき凶悪犯罪」や「高齢男性の犯罪増加」「キレる中年男性の増加」など、いらだつ男性の姿は少しずつ顕在化しつつあるように思われる。

何ともいえない不満や不全感、不安やいらだちが男性の間に広がっているのだ。何かいままでとは違う、既得権が失われつつあるようなぼんやりした感情の広がりが、男性の間に見られるのだ。筆者のいう「剥奪感の男性化=masculinization of deprivation」の広がりだ。

〔PHOTO〕iStock

こうした状況だからこそ、男性というジェンダーに光を当てたジェンダー政策が求められると考え、冒頭の述べたような「男性政策」の可能性を探ってきたのである。

スウェーデン発、男性のための相談機関

実は、こうしたメンズ・クライシスをいち早く想定し、対応を準備してきた国がある。ジェンダー平等先進国スウェーデンだ。スウェーデンには、現在、全国30カ所の「男性のための危機(メンズ・クライシス)センター」がある。

このセンターは、さまざまな危機に直面した男性のための相談と救済のための機関である。スウェーデンで最初にこうした機関の設置を開始したのは、ヨーテボリ市の社会資源局だった。1986年のことだ。おそらく、世界でも最初の男性対象の本格的な相談機関だと思う。

 

ヨーテボリ市でのインタビューによれば、このセンターの設置の背景には、スウェーデンでいち早く広がった男女平等の動きがあったのだという。女性の社会参画の拡大は、女性の経済力を増す事になり、結果として離婚の増加など家族の変化が生じるだろうという見通しから、このセンターの設立が構想されたのだそうだ。

つまり、女性の社会参画の拡大に対応して、もうひとつの性である男性の役割と意識に対する見直しが本格的に開始されたのだ。

センターを運営する中で、父親の育児参加の拡大や男性の意識改革の広がりなどの一方で、男性たちがさまざまな問題を抱えていることが見えてきたという。従来の男性役割に縛られている男性たちを、さまざまな困難やストレスが襲っていたのだ。

特に、女性の社会進出に応じて高まった家庭内での夫婦関係の緊張という問題や、経済的自立をとげた女性の増加にともなう離婚の急増と離婚後の男性たちを襲った心身の健康問題などが、社会問題化したという。

編集部からのお知らせ!

関連記事