「人は7年で生まれ変わる説」に妙に惹きつけられた理由

そういえば身に覚えが…
佐藤 優 プロフィール

ケネディとトランプ

恋愛や結婚だけでなく、仕事にも7年周期はある。評者も外務省に入って7年目の1992年からソ連崩壊後の新生ロシアで思う存分活躍できるようになった。

1999年にはエリツィン大統領が辞任し、プーチンが大統領代行に就任した。この関係で、日本の北方領土交渉に対するスタンスも大きく変化した。

この外交ゲームに参加したために、評者は2002年5月に北方領土絡みの鈴木宗男事件に連座して、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、512日間、東京拘置所の独房に勾留されることになった。

ちなみに、最高裁判所が評者の上告を棄却して懲役2年6ヵ月(執行猶予4年)の判決が確定したのも、逮捕から7年後の2009年6月だった。7という数字には不思議な意味がある。

 

また、職業作家に転じて今年で14年目になるが、教育分野に仕事が大きくシフトするようになった。

〈ヒトは、どうも、何かを始めてから7年目に、「一巡した」という、ある種の完遂感が降りてくるようなのだ。「一巡した。ここから先は、この繰り返し」という気の遠くなるような何かだ。「このままじゃ、ダメだ」あるいは「このままでは、いられない」と感じている人には、次の人生へと背中を押してくれる、強いトリガーになる〉

との黒川氏の言説には説得力がある。

社会は人間によって構成されている。7年周期は社会にも存在するというのが黒川氏の主張だ。自動車やファッション、ライフスタイルに関しても、28年ごとに大きな波があるようだ。そして、56年目に反復する。

黒川氏は、米国の月面着陸計画に着目する。

〈2016年の選挙に勝利し誕生したトランプ大統領は、1960年のケネディ大統領から56年目の大統領である。

どちらの選挙戦も、歴史に残るといわれる大接戦である。1960年11月18日の大統領選でのニクソン候補との票差は、わずか11万票余。全米の投票所の数が約12万なので、1投票所あたり1票以下の差だったことになる。

ケネディは史上最年少、トランプは史上最年長として話題をさらった。ケネディは、海軍の英雄で、トランプはアメリカ的ビジネスの英雄である。ケネディには、選挙戦にマフィアの応援を要請したという噂があり、トランプにはロシアのそれである。

ケネディ大統領は、1961年に「10年以内に月面着陸を実現する」としてアポロ計画を発表。1969年には、アポロ11号がその歴史的偉業を達成した。トランプ大統領は、再びの月面着陸と、それを足がかりにした火星探査計画を発表している〉

月面から見た地球の映像(1968年12月22日撮影 creativecommons/public domain)

そう指摘されてみると、人類の月に対する関心にも確かに波がある。かつて米国は、ソ連と宇宙開発競争を行っていたが、現在は競争相手が中国になった。

さて、来年、2020年は東京オリンピック・パラリンピックが行われるが、前回の東京オリンピックは56年前の1964年だった。こう見てくると、確かに7年単位の周期があるように思えてくる。

7年周期説に科学的根拠があるかどうか評者には判断できないが、黒川氏の文体には他人を自分の言説に引き寄せていく特殊な力がある。

『週刊現代』2019年4月13日号より