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日本銀行の金融正常化=長期金利利上げがトランプのおかげで大窮地に

最後のチャンスはこの4月

FRB、早々の方向転換

世界の経済や金融市場は大きな潮目を迎えている。米中の「新冷戦」、その一部である「貿易戦争」を一因として、米国景気にも黄信号が付いている。

トランプ大統領が票(つまり人気)が集まる短期的な政策に傾倒し、財政赤字を拡大させるのは、最近の政治家としてみたらよくあることである。

早いもので、2020年11月には次の大統領選挙があり、トランプとしては票固めをしておきたいところである。一番の公約であった、メキシコからの大量の不正移民防止のための「国境の壁」の建設はもちろん、景気対策など、長期的な課題よりも、短期的な政策に注力している。

その景気対策としてトランプが注力しているものの1つに、米国の中央銀行たる連邦準備理事会(FRB)への金融緩和の圧力がある。

トランプは理事会メンバーに自身のシンパ(金融緩和志向の強いハト派)を送り込んでいる。昨年6月にニューヨーク連銀の新総裁にジョン・ウィリアムズ、9月に金融政策担当副議長にリチャード・クラリダが着任し、今年3月には空席であった理事にスティーブン・ムーアが着任すると発表されている。ちなみにムーアはオバマ政権の時には「逆に」ゼロ金利(超金融緩和)政策を批判していた輩である。

弁護士で、経済が専門でないジェローム・パウエルFRB理事長は、その影響を早くも受け、今月20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年の想定利上げ回数を2回からゼロに変更した。

海外景気の減速を警戒し、米国債など保有資産の縮小も9月末で終了する。20年には、かろうじて1回の利上げを見込むものの、金融危機時の大規模緩和を縮小する「金融政策の正常化」は、前倒しして終結に向かうことになった。

金融市場は、FRBへのトランプの影響が、どこかで出ると想定していたが、これほど早いとは思ってもみなかった。そのため、市場は、景気減速が予想以上に速いと考え、長期国債が買われ「長短金利の逆転現象」も発生した。

 

日銀金融政策正常化に打撃

しかし、このような米国の中央銀行FRBの金融政策の変更の影響を最も受けたのが、日本の中央銀行日本銀行である。日本銀行は現在、政府と一体化(つまり一蓮托生)して、日本政府の国債を大量購入し金融政策を行っているが、その「出口戦略」に影響が出始めているのである。

現在の金融市場、特に通貨の変動においては、リスクと金利が2大要因である。それほど、金利が与える影響は大きいのである。

特に先進国の中央銀行間では、1987年、西ドイツ(当時)の中央銀行・ブンデスバンクが金利を単独で、突然、引き上げたために発生した「ブラックマンデー」以降、金利の協調を重視してきた。

筆者はメガバンク入行3年目でディーラーになり、経済調査などの業務を通して、ほぼ30年経済や金融市場をみてきたが、つくづく感じるのは、これだけ工場(生産拠点)を海外に移転させても、日本人が一番嫌う経済現象は「円高」のままである。

これは貿易に日本経済が主力を置いていた高度成長期の名残の「トラウマ」といっても過言ではない。現在、韓国経済では輸出の寄与度は4割であるが、日本経済では1割に過ぎなくなっている。

金融が教えている専門家にも誤解が多いものに「中央銀行の目的」がある。

景気が悪化したとき金利を下げる(金融緩和)を行うことが仕事と勘違いしている方が、極めて多い。

逆に金融政策の目的は、経済が非常事態を脱したら、素早く金利を正常時の水準に戻すこと、緊急時に緩和する余地を確保しておくことこそ、最も大事な仕事なのである。

その点で、現在の日本銀行は、金融政策がアベノミクスの経済政策中で主力となっていることもあり、強い圧力の中、他の先進国の主要中央銀行に比べ、この正常化がどうしても遅れてしまった。