晴海・五輪選手村の「巨大タワマン」が我々の不動産にもたらす影響

地価暴落の引き金を引くという見方も
週刊現代 プロフィール

引き渡しまでに起きること

東京の新築マンションが高騰を続けるのは、値上がりへの期待や相続税対策としての期待が高かったからだ。不動産は「住む」ものではなく、金融商品として取り引きされてきた。だが晴海フラッグは、投資用には向かない物件と考えたほうがいい。

「投機目的のマンションは、多いと常時2%は売りに出ています。分譲約4000戸のうち80戸以上、ふつうのマンション1棟分が市場に出ているとなると、まず晴海フラッグ内での価格競争が起こり、値下がりするスピードが早い。

併せて1400戸以上が賃貸として供給されますから、人に貸そうにも更なる値下げ合戦に飲み込まれることになります」(榊氏)

そもそも投資目的で4年も先に引き渡される物件を狙うのは、分の悪いバクチと考えるのが普通だ。

「最大の懸念事項は、金利水準です。いちばん安価な物件で売り出し価格が6000万円程度と仮定します。30年の住宅ローン金利が0.5%から1.5%に上昇したとすると、総支払額は1800万円増える計算になる。

つまり、割安で買った意味がなくなります。日銀の黒田東彦総裁の任期はちょうど'23年4月までで、いまのゼロ金利政策が変化していてもおかしくない」(前出・山下氏)

 

ただ、投資目的でなく住宅用に購入したい人にとっては、湾岸の最新タワマンが安く手に入るのは魅力である。しかし、その安さは東京の不動産市場全体に影響を与えるだろう。

ただでさえ、値段が上がりすぎた都心部の新築マンションでは買い控えが進んでいる。

そのようななか、近年のタワマンブームの象徴ともいわれた湾岸エリアに格安物件の大量供給が行われることで、過熱していたマンション投資に冷や水を浴びせることになるからだ。

晴海フラッグが引き渡されるまでの4年間で、不動産市況が大きく変わる要因がある。オラガ総研の牧野知弘氏は言う。

「まず、後期高齢者の人口が多い大田区や世田谷エリアでは大量の相続が発生します。次に、'22年に生産緑地の指定期限があります。生産緑地とは、農地として使う義務と引き換えに、固定資産税などの大幅減税が受けられる土地のことです。

いずれにしてもマンション用地が増え、晴海フラッグと同じような割安レジデンスが大量に生まれるきっかけになるでしょう」

晴海フラッグ最大のメリットである「お買い得感」が周囲の物件価格を下げ、そこに人口構造の変化などが加わる。そうなると物件引き渡し時には、晴海フラッグは「お買い得物件」ではなくなっているかもしれない。

では、具体的に東京のどのエリアから不動産価格の下落ははじまっていくのか。

「ゆりかもめが走る有明や東雲エリアの駅遠物件は危ないと言えるでしょう。すでに、湾岸エリアに投資目的で物件を持つのは危険な賭けだとされていますが、その傾向は強まります。

どうしても湾岸で買いたいのであれば、月島や勝どき駅至近のタワマンなどを買ったほうがまだ安全です」(牧野氏)

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山手線外のエリアでも世田谷、杉並などは地価が安定していた。だが、晴海フラッグの登場によってそのあたりも危なくなる。

「山手線の内側では、今や坪300万円以下で買える物件はなく、晴海フラッグの売り出し予想価格を坪270万円程度と考えれば、ここは競合するエリアではありません。

懸念すべきは、世田谷や目黒区、杉並区や品川の一部エリアと食い合う価格帯であることです。今回の住宅大量供給は当然、これらの地域の下落圧力となります」(前出・榊氏)