がんと付き合い続けて14年生きた、樹木希林さんから学ぶこと

「がんでいいじゃない」、そう言われても……というあなたに
週刊現代 プロフィール

淡々と生きる

「がんを患ってから、テレビのペースに身体が合わなくなってきた」と、希林さんは活躍の場を映画に移し、死の直前まで『あん』『万引き家族』そして遺作となった『日日是好日』と立て続けに作品に出演した。

'14年にがん治療が終了したことを明らかにしたが、その人生は常に死と隣り合わせのものだっただろう。ただ、残された時間が「がんのおかげで成熟した」人生の集大成だったのは間違いない。

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前出の遠藤氏が、希林さんと最後に言葉を交わしたのは、亡くなる1ヵ月前のことだった。

「亡くなられる2~3ヵ月前からは杖をついて私の経営するブティックにいらっしゃったのでビックリしました。『もう、背中が痛くてしょうがないのよ』と言って、店のソファーに座って話をしていたのです。

痛いのに出歩いていて大丈夫なんですかと聞くと、『かえって出かけていたほうが気分転換になるし、それがいいのよ』とおっしゃっていました。その時も映画の仕事を同時に何本もこなしていましたから、すごいエネルギーだなと思いました。

それから1ヵ月後、希林さんと電話で話したのが最後でした。『これからも頑張ってね』なんて言葉が飛び出して、いやな予感はしていたんです。

もし私が病気になったとしても、希林さんのように淡々と生きられたらいいなと思います。なったらなったで、その病気と付き合っていくしかないのだと」

 

生きることに絶望せず、といって執着もせず、他人が自分をどう見ているかも気にせず、亡くなる直前まで自分の運命と向き合う。純粋に人生を面白がって過ごしてきたからこその死生観なのだ。

晩年のインタビューで希林さんは、がんの「良いところ」を挙げていた。

「布団の上で死ねるなんていうのは上出来なことなのよ。がんは、布団の上で死ねる病気なの。私、家で死にたいからさ」

その言葉どおり、希林さんは昨年9月14日に病院を退院し、翌日家族に看取られながら75歳の人生に幕を閉じた。女優として現役を貫いただけでなく、自分の思いを最期まで叶え続けたのだ。

病は突然私たちを襲う。どれだけ健康を気遣っていようが、避けられないことだ。だからこそ、病気を恨むのではなく、うまく付き合いながら生きたほうがずっと幸せに過ごせる。大切なことを、希林さんは私たちに教えてくれた気がする。

「週刊現代」2019年3月23日号より