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堀ちえみさんの告白に思う…舌がん前兆の「違和感」の重要性

とても大事なことだから

何度も検査したのに

〈手術直後は、壮絶な痛み、苦しみ、辛さに、心が折れてしまいそうになりました〉

先月、ステージ4の「舌がん」であると発表した堀ちえみさん。舌の6割を切除し、あわせて、大腿部の組織を舌に移植する再建手術、首のリンパ節に転移したがんの切除も行った。手術は無事に成功したが、悲痛な胸中を、自身のブログで冒頭のように綴った。

11時間に及ぶ手術を要したその病魔は、身近なところから訪れたという。

〈最初は昨年夏頃に、舌の裏側に小さい口内炎ができました〉

はじめは、ただの口内炎だと思っていたものが、実は舌がんだったのだ。総合東京病院口腔癌センター長の小村健氏が解説する。

「舌がんは、口腔がんという口の中にできるがんの一種で、全国で年間約4000人、罹患していると推定されます。虫歯で欠けた歯や、合わない義歯、悪い歯並びを放置して、慢性的にできた傷、および喫煙・飲酒などによって引き起こされます」

発症例は多くはなく、「希少がん」に類される舌がん。その珍しさから、堀さんのかかりつけの歯科医や、持病のリウマチの主治医など、複数の医師が誤診した。大学病院で正しく診断された時には、口内炎の発症から約半年が経過していた。

どうして、これほどまでに見逃されたのか。

「舌がんは、専門医が診れば容易に診断できるがんです。ですが、専門医の資格をもたない一般的な歯科医の場合、口腔がんの知識や経験が少ないため、誤診してしまうことがあります」(小村氏)

誤診に基づく誤った治療を続けたため、がんはステージ4にまで進行した。舌がんは早期に発見すれば根治も可能で、術後の生活も大きく変わる。北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏が語る。

「早期のがんであれば、放射線治療が可能です。放射線を照射する針を5日程度入れれば、95%以上の確率で治ります」

実際、初期段階の舌がんを放射線で治療した中田純子さん(50代・仮名)はこう話す。

「手術の直後は強い痛みがありましたが、舌を切らずに残すことができたため、リハビリをせずに、すぐに喋ることも、食べることもできました」

 

早期に発見すれば、舌の機能を残せる。しかし、がんが進行した堀さんには切除するほか道は残されていなかった。切除後は、日常生活を送るために、舌の再建が不可欠となるが、問題となるのはこの新しく作った舌だ。

「人は言葉を発する時、まず喉頭から音を出し、舌の形や位置を変えることで音をさまざまに共鳴させて、『あいうえお』といった声を作り出します。そのため、発声には舌の再建が欠かせません。

また、舌がないと、食事の際に、舌がなくなった空間に食べ物が溜まり、嚥下がスムーズにできなくなります。

ですが、再建した舌には、神経や筋肉の機能がないので、動かすことができない。再建した舌は、残った舌にくっつけているので、残った舌を動かして、再建した舌も一緒に動かす訓練が必要となります」(前出・小村氏)

舌の4割しか残されていない堀さんには、日常生活を送るうえで、これから数々の困難が待ち受けている。