来たる“移民社会化”に向けて、私たちに必要な2つの「発想の転換」

あなたも「移民」である
塩原 良和 プロフィール

移民の「自由」を剥奪することの意味

①自由民主主義国家における結婚・家族移住

是川の分析も示唆するように、移民社会化には国際結婚移住や家族の移住が大きく影響する。新設の在留資格「特定技能1号」では、家族の帯同は認められない。家族帯同が認められる「特定技能2号」がどの程度機能するのかは、現時点では不透明である。

しかし、そもそも永住者や定住者といった在留資格で滞在する人々は、国外から配偶者や子どもを呼び寄せることができる。また後述する「専門的・技術的」な就労を行うための在留資格の大半も、期間や活動が限定されるものの、配偶者や子どもを日本に滞在させることができる。つまり在留外国人の大半は、配偶者や子どもを日本に呼び寄せられる。

しかも日本国籍保持者・永住者・特別永住者の配偶者は、永住許可申請のために日本に住み続けなればならない期間が、通常の10年から3年へと短縮される(法務省「永住許可に関するガイドライン」)。なお日本で生まれた永住者の子どもも、永住許可を申請できる。急増してきた永住者の相当部分が、こうした婚姻や出生を経ていると考えられる。

このように結婚移住や配偶者・子どもの呼び寄せは、永住者、すなわち移民の増加と深く関連している。では、それを「完全に」止めることはできるだろうか。

日本を含めた自由民主主義国家では、公共の福祉に反しない限り、恋愛の自由は保障される。また家族と共に暮らす権利は、国際的に人権のひとつと位置付けられている。もちろん実際には、権利や自由にはさまざまな制約があり、無制限に行使できるものではない。外国人と結婚することが「公序良俗」に反するとされた時代が多くの社会であったし、いまでもそう思っている人はいる。

第二次大戦直後、日本に進駐した連合国軍の兵士と結婚した「戦争花嫁」と呼ばれた日本人女性の多くは当初、夫が暮らす国に移住できなかった(田村2013)。だがグローバル化が進む現在、政府が国際結婚や家族呼び寄せを制限するということは、この文章を読んでいる「あなた」自身やあなたの家族が、自分と国籍が異なる人と恋に落ち、家族をつくり、一緒に暮らす自由と可能性を制限するということである。

それらが「完全に」認められない社会を、あなたは本当に望むだろうか。そもそも自由民主主義国家で、それらを全面的に禁止することは現実的に可能だろうか。

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②グローバル資本主義と外国人材の誘致

永住者ほどではないが、「専門的・技術的」とされる在留資格によって就労する外国人も増加している。いわゆる「単純労働者」とは異なり、日本政府は優秀な外国人材の受け入れを少なくとも2000年代から推進してきた。

金融や経済のグローバル化が進み、カネやモノや情報が国境を越えて激しくゆきかうなか、人材だけ国境を越えないと想定するのは非現実的である。たとえば日本国外に住む在留邦人数(短期滞在者を除く)も、1984年から2017年までに約2.8倍増加し、約135万人(うち約48万人が永住者)となっている(外務省「海外在留邦人数調査統計」)。

とりわけ他国に永住する日本国籍保持者は、2007年〜2017年の10年間で平均して年間約14,000人ずつ増えている。このなかには結婚・家族移住も含まれるが、現地で就労し、現地経済に貢献している人も多い。

日本に永住する外国人は、人の移動のグローバル化という同じ現象のコインの裏側であり、そちらだけを拒絶するのは無理がある。

それどころか2010年代に入り、日本政府は永住許可を得やすくすることで「高度外国人材」をいっそう積極的に獲得しようとしている。2012年以降、「高度人材ポイント制」や在留資格「高度専門職」を新設し、該当する外国人材の永住者在留資格への変更要件を緩和し、配偶者の就労を許可し、親や家事使用人の帯同を一定の条件で許可するなどの優遇措置を講じている。

2017年からは、特に高度と認められる外国人材は最短1年間の日本在留で永住許可申請が可能になった(「日本版高度外国人材グリーンカード」)。

また日本政府は、日本の学校を卒業した外国人留学生が日本国内で就職することも奨励している。東京工業大学の佐藤由利子によれば、2016年度に卒業・修了した留学生のうち、大学学部・短大卒で4〜5割、大学院・専修学校卒で2〜3割が日本国内で就職している。

同年に技術的・専門的分野の主な在留資格を取得した外国人のうち、元留学生(在留資格「留学」からの変更)は約3割である(佐藤2018)。留学から日本国内の企業で就労する在留資格に切り替えた場合、留学期間を含めて在留期間10年(うち5年の就労資格)で永住許可申請が可能になる。それゆえ、日本で就労する元留学生のなかから永住者となる者も増えると示唆される。

永住許可や家族呼び寄せへの道を開くことは、優秀な外国人材を呼び寄せるインセンティブになる。彼・彼女たちは高学歴で、ミドルクラスの素養や価値観を身につけている。

そうした人々は(日本人の高学歴ミドルクラスがそうであるように)、ただお金のためだけに働くわけではない。むしろ、働くことを通じた収入や自己実現と、自分や家族の望ましいライフコースや充実したライフスタイルを両立させようとする(ライフスタイル移住)。

永住や家族呼び寄せが認められなければ、その前提となる自由で安定したライフスタイル・法的身分が得られない。そうなれば、彼・彼女たちは恵まれた経歴やスキルを活かして、より条件の良い他国へと移動していくだろう。

グローバル経済のなかで日本の国益を追求するために優秀な外国人材を招致したいのであれば、そうした人たちが家族を呼び寄せ日本に永住する経路を閉ざすわけにはいかないのだ。