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来たる“移民社会化”に向けて、私たちに必要な2つの「発想の転換」

あなたも「移民」である

「移民国家」という現実

2018年度は、日本政府の外国人労働者受け入れ拡大方針をめぐって揺れた1年だった。

6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(「骨太の方針2018」)に新たな在留資格の創設が明記され、12月に改正された出入国管理及び難民認定法(入管法)によって、2019年4月から在留資格「特定技能(1号・2号)」が導入されることになった。この法改正をめぐって、国会やメディアで議論が繰り広げられた。

こうした動向に関する論考を依頼され、この原稿を書いている最中に、講談社現代新書から望月優大著『ふたつの日本―「移民国家」の建前と現実』が刊行されたと知った。同書は、現代日本の外国人労働者について考える際に知っておくべき事実を的確にまとめた仕事である。その内容については、旧知の下地ローレンス吉孝の記事を参照してほしい。

望月は、「特定技能」の新設は日本の外国人労働者政策の転換というより、その矛盾や問題点を解消しないまま量的拡大を図る方途であると疑う。

むしろ重要なのは、日本政府は「移民」を受け入れない方針を続けてきたが、実際には「永住者」の在留資格をもつ外国人をはじめ、事実上の移民といえる人々が一貫して増え続けている事実である。望月は入手可能な統計データを的確に整理し、「移民国家」としての日本の現在地点を鮮明に描き出している(望月2019)。

移民社会化を「止める」ことはできない

時宜を得たテーマであるにも関わらず、望月がセンセーショナリズムに走ることなく、従来の研究蓄積を踏まえて堅実に議論を展開している点も評価したい。事実上の移民が日本で増え続けていることは、一般には注目されてこなかったとしても、この問題に長年取り組んできた研究者や実務者にとっては議論の前提でさえあった。

移民は、日本社会でこれまで増え続けてきたし、今後も増え続ける。そのことについて、国立社会保障・人口問題研究所の是川夕が、興味深い推計を行なっている(是川2018)。

是川は、永住者を含む外国籍の在留外国人(技能実習生を除く)に加え、日本国籍を取得した外国出身の人々(帰化者)、そして日本国籍保持者と外国籍者のあいだに生まれた子ども(国際児あるいは「ハーフ」。現在の国籍法では、出生時に日本国籍をもつ)の数も推計に加えた。

こうした人々は国籍がどうあれ、他国では「移民1世」「移民2世」と呼ばれうる。是川の推計では、こうした「移民的背景をもつ」日本社会の住民は2015年10月時点で約332万5000人おり、外国籍住民人口の約2倍、日本の総人口の2.6%であった。

それが2040年には約726万人、2065年には約1075万6000人(うち約500万人が帰化者・国際児)となり、総人口の約12%を占めるようになる。これは、現在の欧州における移民人口の水準に匹敵する。

しかも、移民社会化は若年層ほど早く進む。是川によれば、2015年時点ですでに、日本全体の0〜9歳の人口に占める「移民的背景をもつ」子どもの割合は6%近くになっていた。それがいまから約10年後の2030年には約10%、つまり10人に1人が「移民的背景」をもつ子どもになる。そして、2065年には約20%に到達する。

是川の推計は、2015年までのデータに基づいている。したがって、2019年から新設された在留資格「特定技能」による増加分は考慮されていない。しかも、2010年代後半に急増した技能実習生の数も推計には含まれない。

技能実習生や「特定技能(1号)」による入国者は、滞日期間が限られた事実上の「ゲストワーカー」である。移民の増加は、最近の外国人労働者をめぐる論争で注目されるこれらの制度からは独立した潮流なのである。

是川の予測した「移民的背景をもつ」人々の増加は、「移民」の存在を決して認めず、「単純労働」外国人労働者を公式に導入していない日本政府の政策を前提としている。今後、政策の変化によってペースが加速・減速することはあっても、移民社会化という潮流そのものを「止める」ことは難しい。

なぜ止められないのか。そこには、次のような理論的見通しがある。