トランプ「勝利宣言」の会場で私が見た、アメリカの恐るべき現実

「すべてQの予測通りになったわ」
海野 素央 プロフィール

「ロシア疑惑はついに死んだ」

カントリーの有名曲「God bless the USA」が流れる中、演壇に悠然と現れたトランプ大統領は、まず演説の冒頭で、「3年にわたる嘘と中傷と悪口の日々ののちに、捏造のロシア疑惑(the Russia hoax)はついに死んだ」と述べ、喝采を浴びました。

これまでもトランプ大統領は、「トランプ陣営とロシア政府との共謀はない」と繰り返し主張し、ロシアゲートを「民主党とメディアの幻想」とレッテルを貼ってきました。

今回も、「念入りに作られたでっち上げだ」「民主党、メディアと腐敗した情報機関が、2016年の選挙結果をひっくり返そうと試みたのだ」と語気を強めて語り、何度もゆっくりと会場を見回して、会場の歓呼を集めていました。

 

このグランドラピッズの演説で、トランプ大統領は「議会民主党、メディアと情報機関の悪意によって、私と支持者は不当な容疑をかけられ、犠牲者になることを強いられた」というメッセージを、高い声のトーンとエネルギッシュな話し方で、効果的に発信したと言えるでしょう。

筆者はこのとき、トランプ大統領の演台から数えて3列目の真正面で聞いていましたが、大統領のメッセージが周りの支持者からかなりの共感を得ていることが伝わってきました。

こうなると、大統領の民主党批判は止まりません。

ロシアゲートに関して、今後も追及する姿勢を崩していない下院特別情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党カリフォルニア州28選挙区選出)については、「彼の首は私が今まで見た中で一番細い(細い首=”pencil-neck”は、米俗語で「ひ弱な」という含意がある)。彼は今日こう言っていたよ、『よくわからないが、それでもロシアとの共謀はあったんだ』。病気、病気、彼らは病気だよ」と一蹴し、会場の笑いを誘っていました。

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議会民主党への攻撃も忘れません。

「ロバート・モラーは(トランプ陣営とロシア政府との)共謀がなかったと言うまで、民主党にとって神様のような存在だった。だが、彼らはいまモラーを大嫌いになっている」

メディアについても、保守系のFOXニュースの司会者を褒め、ロシア政府との共謀や司法妨害の可能性について報じ続けてきた米CNNやMSNBCは「急速に視聴率が低下している」「二度と信頼を得ることはできないだろう」と支持者に訴えました。

トランプ大統領はこの集会で、ロシアゲートに関する「政治的勝利宣言」を行うとともに、支持者とそれを祝ったのです。

トランプ大統領は、このままロシアゲートの幕引きを図ろうとしています。その一方で、2020年の米大統領選挙では、今回の報告書を民主党に対する「攻撃材料」に利用することは間違いありません。同年に行われる上院・下院選を戦う共和党候補も、バー長官の報告書を民主党候補に対する「武器」として活用するでしょう。

一方、議会民主党は「国境の壁」建設やオバマケアの維持などの争点に時間とエネルギーを割くのか、それともロシアゲートにおける共謀や司法妨害の疑惑を引き続き追及していくのかで、対応が分かれています。次回の大統領選挙でトランプ大統領を破るには、民主党には統一した選挙戦略が不可欠になるでしょう。