写真はすべて筆者撮影

なぜ日本と韓国の間で「桜の起源論争」はこれほど長引いたのか

桜を愛でる文化は日本が育てたが…

文化としての桜、植物としてのサクラ

昨春、「中国人も韓国人も、日本の桜が気になってしかたない理由」という記事を書きました。

幸い多くの読者に読んでもらえたようで、コメントも沢山いただきました。ただ残念だったのが、「日本の素晴らしい桜の文化を中国や韓国からの観光客が分かるわけがない」……というような、一歩間違えれば、お隣の国々に対する差別とも受け取れかねないコメントが少なくなかったこと。

筆者も、そうした意見の前半部分には賛同します。桜を身近な存在に育てあげたのも、世界に誇る文化として磨き上げたのも、紛れもなく日本と日本人です。

しかし、筆者が伝えたかったのは、そこじゃないのです。桜も(当たり前のことなのだけれど)「もとは野生の植物である」ということ。「桜の文化」を語る前に、「桜の文化は日本独自だけれど、野生植物としてのサクラは、アジアの共有自然財産である」という事実を、まずは知っていただきたかったのです。

 

ソメイヨシノ「起源論争」のその後

「桜の起源」にまつわる論争について、改めて整理しておきましょう。筆者の見解は、まとめると下記になります。

(1)野生生物としてのサクラは、日本にも中国にも韓国にも在来分布している、よって、そのような次元からいえば、東アジアのどの国も「桜の発祥の地」であると主張する権利を有している。

(2)「桜を愛でる」習慣が広く大衆に行き渡っているのは、日本独自の文化と言ってよい。

(3)日本で作成された品種ソメイヨシノが、現在の「桜を愛でる」文化の中心になっている。

日本と韓国の間では、長らく「ソメイヨシノの起源」が争点となってきました。韓国では「ソメイヨシノは済州島の野生の桜である」とか「韓国で親しまれている王桜(ワンボンナム)がソメイヨシノの起源である」と主張する向きが、少なくありませんでした。

しかし、この問題はすでに決着がついています。ソメイヨシノが、日本の伊豆諸島周辺地域の野生集団(オオシマザクラ)と本州の集団(エドヒガン)の交配により作出された品種であることは、DNA解析によって証明されています。

また昨年9月には、韓国でも「ソメイヨシノと王桜は別の植物である」との見解が報じられ、徐々に受け入れられつつあるようです。

〈韓国・中央日報は、『済州か日本か...ソメイヨシノ起源めぐる110年論争に終止符』と見出しを取り、韓国の研究チームが行ったゲノム分析の結果を報じた。韓国では、同国の済州島に自生する「王桜(ワンボンナム)」がソメイヨシノの起源であるとする説が広く信じられているが、今回の分析により「済州の王桜と日本のソメイヨシノは明確に異なる別の植物であることが分かった」という。その結果は、世界的な学術誌『ゲノムバイオロジー』9月号に掲載された〉(ニューズウィーク日本版、2018年9月19日「ソメイヨシノ韓国起源説に終止符? 日本文化の起源巡る韓国世論に変化の兆しか」より)

しかし、なぜ「ソメイヨシノ」と「王桜」をめぐる論争はこれほどまでに長引いたのでしょうか。また確かに、これら2つの植物の見た目は似ていますが、それはなぜなのでしょうか。

それを知るためには「桜/サクラ」という、2つの異なる次元から理解する必要があります。

東京・千鳥ヶ淵の桜(2018年撮影)